スペイン

2009年10月17日 (土)

Arrugas

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Arrugas(皺)
作:Paco Roca(パコ・ロカ)
Astiberri社、2009年刊(初版2007年刊)

《あらすじ》
 かつて銀行の重役だったEmilio(エミリオ)は、子供達により、養護老人施設へと預けられる。同室のMiguel(ミゲル)はお金にうるさく抜け目がない。食事の時のテーブルには、時折面会に来る孫のために色んなものを取っておく女性Antonia(アントニア)や、アルツハイマーの夫Modesto(モデスト)の世話を焼く妻Dolores(ドローレス)がいる。また、施設には様々な行動をとり、様々な思い出を持つ老人達が、日々の暮らしを送っている。そして重症の老人は2階の部屋へと入れられる。Emilioはある日、Modestoと薬を間違えられたことで、自分がアルツハイマーだと知る。Miguelは日常を変革しようと車を手に入れ、EmilioやAntoniaと共に深夜をドライブしようとする…

《感想など》
 今回もスペインの漫画をとりあげます。本作は、前回取り上げた『BARDÍN el Superrealista(スーパーリアリスト・バルディン)』に続いて、2008年の「Premio Nacional del Cómic」(漫画国家賞)を受賞したとのことで、その評判がうかがえます。『BARDÍN』は哲学的・抽象的な作品でしたが、こちらは「老い」というハードなテーマを扱った作品。だから途中で読むのがつらくなったりもしましたが、人物の描写に作者の暖かい目線が感じられ、また、彼らが老いを受け入れていく過程が描かれているので、読後感はおだやかな感じでした。

 ところでこの単行本、初版はフランスで刊行されたとのことで、スペインの漫画家には、フランス(語圏)でデビューしてから自国で単行本が刊行されるというパターンが結構あるみたいです。

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2009年10月 7日 (水)

BARDÍN el Superrealista

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Hechos, dichos, ocurrencias y andanzas de
BARDÍN el Superrealista

(スーパーリアリスト・バルディンの事実、言葉、思いつき、そして冒険)
作:Max(マックス、1956-)
La Cupula社、2007年刊(2006年初版)
●作者Maxのサイト

 スペインの漫画本。あらすじを説明するのが難しい…。BARDÍN(バルディン)という名の中年男性が主人公の、シュールで時にブラックでユーモラスな短編集です。作者のMax氏は、先る5月29日にセルバンテス文化センター東京で来日講演をし、今発売中の雑誌『季刊エス』に小野耕世氏との対談が掲載されているので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。講演では「スペインはブラックユーモアのゆりかご。死に対して悔やみの気持ちもあれば、ブラックユーモアとして受け止める視点もある。ゴヤの絵やフラメンコ等にブラックユーモアの表現が見られる(←メモを取ったのですが、言い回しが少々不正確かも)」と語っていたのが印象的でした。本書はスペインで2007年に文化省による第一回「漫画国家賞」(Premio Nacional del Cómic)を受賞しているとのことで、現地で好評を博している模様です。

 BARDÍNはスーパーリアルな世界に召還されて奇妙な体験をしたり、友人とコニャックを飲みながら議論を戦わせたり、悪夢にうなされたり、異世界の住人から啓示を受けたり言い負かしたりと、日本のマンガには無いようなへんてこりんなショートショートの連続です。ダリの映画「アンダルシアの犬」が元ネタとなっていると思しき短編もありました。話題が哲学や宗教にも及ぶので読んでいて難解でしたが、画面のデザインが凝っているので、眺めているだけでも楽しいものです。目玉3つで構成されたミッキーマウスもどきのキャラクターがユーモラスでしたし、オリジナルのマンダラが展開されたり僧侶が現れたりと、ところどころで東洋趣味が現れるのが面白かったです。とりわけ興味深かったのが、『季刊エス』でも紹介されていた、ラストのオチに「クレヨンしんちゃん」が出てくる短編で、スペインでの「しんちゃん」人気があらためてうかがえました。あの痛ましく残念な事故で「しんちゃん」の作者が亡くなった時もスペインでも報道され、多くのファンが追悼のコメントをしていました。

(最終更新日:10月15日)

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2009年5月21日 (木)

スペイン(語圏)の漫画本をネット通販でお取り寄せ&雑談

 またしても当ブログの更新が途絶えてしまって、すみませんでした。この時期、そして前回のエントリの続きであれば、今回の話題は当然、メビウス来日シンポジウムの件になるだろうと皆様お思いのことと思います。が、それはまた後日にして、今回は、先日ふと思い立って、スペイン(語圏)の漫画本をネット通販で取り寄せてみましたので、そのご報告をしようと思います。


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 利用したのはスペインのネット書店で「AGAPEA」というサイト。発送に国際郵便小包を使っているせいか、送料が若干お安く感じられました。発送通知のメールが来なかったのでやきもきして問い合わせのメールを出したり(手続きは滞りなくされていました)、商品が梱包されずにそのまま段ボール箱に入っていたり(環境に優しいかも)、一部の本の表紙が若干擦れて汚れていましたが(古くから洋書を買い慣れている人から見れば十分許容範囲なのでは)、すんなりお買い物できて良かったです。

 購入した漫画本のタイトルは、以下の5冊。
·ALACK SINNER VOL.4 ENCUENTROS Y REENCUENTROS (Muñoz / Sampayo)
 アラック・シナー VOL.4 出会いと再会 (ムニョス/サンパージョ)
·HISTORIA DEL BAR VOL.1 EL BAR DE JOE (Muñoz / Sampayo)
 バーの物語 VOL.1 ジョーのバー (ムニョス/サンパージョ)
·LOS VIAJES DE JUAN SIN TIERRA 2 La Isla de Nunca Jamás (Javier de Isusi)
 土地無しフアンの旅 2 ネバー・アイランド (ハビエル・デ・イスシ)
·Las calles de arena (Paco Roca)
 砂の街 (パコ・ロカ)
·MACANUDO #2 (Liniers)
 驚くべき (リニエルス)

 5冊中4冊までは、フランス語版も出ています。アルゼンチン出身のコンビ、Muñoz / Sampayoの作品は、実はフランス語版の方が原書です。最後の1冊のアルゼンチンの4コマ漫画集も、第1巻はフランス語版が出ていることを、いまさっきamazon.frで検索して知りました。だから、スペイン(語圏)の漫画を読むなら、フランス語でかなり事足りそうな気がします。さすが漫画大国フランス。じゃぁ一体私は何でこんな手間のかかることを…。いやいや、表紙カバーの折り返しに載っている推薦文とか、ネットで見かける作者インタビューとか、原語を知っていると良いことがあるんですよ。ちゃんと読み終えるのがいつのことになるやら見当もつきませんが、いずれ感想など書ければと思います。

 なお、上の写真で漫画本を立てかけているのは、100円均一の店で買った金網を軽く折り曲げたもの。安上がりな書見台です。本を開いてページの端を大きめのメモクリップで金網に挟んで固定し、ページとにらめっこしながら、空いた両手で電子辞書を叩いたり紙の辞書を引いたりしています。使っている電子辞書は、CASIOのEX-wordのスペイン語バージョンに別売りのフランス語辞書のCD-ROMをインストールしたもの(2年前に購入)。電子辞書は熟語検索が便利ですね。また、私の機種はスペイン語の単語を変化形(動詞の活用や名詞の複数形等)から検索できるのが何より助かります。


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 まだ買ったばかりなのでパラパラめくっている段階なのですが、上記5冊の内、スペインの漫画であるJavier de IsusiのとPaco Rocaの作品に思わぬ共通点を発見しました。Javier de Isusiの「LOS VIAJES DE JUAN SIN TIERRA」シリーズは、主人公が失踪した友人を捜索して中米諸国を旅する物語なのですが、この作品が「Corto Maltese(コルト・マルテーズとかマルテーゼとかマルティーズとかマルテスと呼ばれたり、Maltésと綴られたりするシリーズものの漫画で、作者はHugo Prattと書いてユーゴ・プラットとかウーゴ・プラットとかヒューゴ・プラットと呼ばれるイタリア人)」の影響を受けていることは先刻承知していました(というか、上に挙げたコマはかなり気合いの入ったオマージュ)。しかし、Paco Rocaの「Las calles de arena」の出だしで、コミックショップにいる主人公が携帯電話の向こうでむくれている彼女へのプレゼントに購入するのがCorto Malteseの等身大フィギュアというのは、ちょっと驚きました。そんなフィギュアが実在するかどうかは不明ですが、スペインにおいては今もなお、このシリーズの人気があるのだなと思いました。日本ではアニメ映画が公開されたものの原作漫画は翻訳も出ず、あまり知られていない「Corto Maltese」ですが、漫画本編の紹介はもちろんのこと、ヨーロッパや南米における影響など、追い続けていきたいものだと思いました。


 何がどこまで出来るか心許ないし、何のためにやっているのか自分でもよく分からないのですが、こうして海外の漫画について調べたり書いたりするのは、なかなか面白いものです。書いていく過程で発見がありますし、書きながら気付くこともありますので、これからもエントリをたどたどしく綴っていく所存であります。発見の一例を挙げますと、「JUAN SIN TIERRA」というネーミングの由来は恐らく欠地王ジョンという歴史上の人物だと思うのですが、世界史の授業を真面目に聞いちゃいなかった身としては、この漫画に出会わなかったら昔のイングランドの出来事など知るよしもなかったでしょう。


《5月23日追記》
 スペイン語圏のネット書店ということで、過去に利用したことのあるアルゼンチンのサイトについても挙げておきます。
Tematika.com
Librería Santa Fe
 随分と以前のことだから記憶が薄いのですが、どちらも1回はメールのやりとりをしました。前者は住所の入力フォーマットが日本の実情と合わなくて変な内容になってしまったために、向こうから問い合わせが来ました。後者は注文してから何日もステータスに変化が無かったので、こちらから問い合わせしたのでした。後者の方は発送に国際郵便小包かDHL等の大手業者かが選べたように記憶しているのですが、残念ながらネットで見かけるアルゼンチンの郵便事情を考えると、送料が高めでも大手業者に頼んだ方が良いかなと思ったものでした。(ただ、更に微妙な問題として、アルゼンチンは本の値段自体は安めなんですよね…)
 念のために申し上げますが、冒頭に挙げたものを含め、これらのサイト紹介の目的はあくまでも日本からの購入体験のご報告といった程度のものであり、別に宣伝の意図はありません。なので、ご質問にもお答え出来ませんし、ご利用はあくまで自己責任ということで、どうかご理解下さいますよう宜しくお願い申し上げます。


(最終更新:7月5日)

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2008年12月20日 (土)

Euromanga Vol.1(ユーロマンガ 1号)

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Euromanga Vol.1(ユーロマンガ 1号)
(飛鳥新社、2008年9月刊)
●公式サイト

 今年の9月に創刊した、日本初のヨーロッパのマンガ、バンド・デシネの専門誌。現地で既に好評を博している作品をセレクトして、複数回に分けて掲載していくとのこと。日本にBDを紹介するにあたって、あえて「Euromanga」という呼称を用いているのだとか。創刊号に掲載されているのは「SKY-DOLL(スカイ・ドール)」「RAPACES(ラパス)」「BLACKSAD (ブラックサッド)」「BIBENDUM CELESTE(天空のビバンドム)」の4作品。1500円というリーズナブルな価格なのに、フルカラーでゴージャスな誌面です。

 マンガ以外の記事は「ユーロマンガの世界へようこそ!!」「ニコラ・ド・クレシー ─ グラフィックの愉しみ」「Euromanga の友達」の三本立て。とりわけ一つめの記事は、バンド・デシネの特徴や歴史や代表作、及び日本での紹介事例について、わかりやすくコンパクトにまとめてあり、とても参考になりました。


 4つの作品のうち「スカイ・ドール」「ブラックサッド」「天空のビバンドム」は、個人ブログで紹介されていたり、邦訳が出ていたり、同じ作者の別作品が書籍に掲載されていたりと、日本でもその評判が知られているものでしたが、「ラパス」だけは恐らく今回が初上陸であり、現地からあえて紹介したかった作品なのではないかと思われます。私は、作画のスイス人エンリコ・マリーニ(Enrico Marini)が描く予定の「Corto Maltese」(→Le Figaroの記事)が気になっていますので、いつか誌面で取り上げて下さると有り難いです。

 今号でセレクトされた4作品は、どれも設定が凝っているし、絵も素晴らしく、綺麗な彩色で十分に堪能できました。ただ、セリフやモノローグが日本語で書かれているとはいえ、もともとの文章が長いせいもあり、作品世界に入り込むのにちょっと手間取りました。これは私の個人的事情かも知れませんが、日本語で書かれていると、つい、日本のマンガを読むようなリズムで、急いで読もうとしてしまうからなのかも知れません。また、私がこれまで翻訳書を読みつけていなかったせいもあるかと思います。日本語の文章だと頭から読むけど、原文だと、固有名詞→主語→動詞→目的語→修飾語といった感じに、自分で意味を拾いに行くし、辞書を引き引き一語一語刻むように読み込むから、時間はかかるけどその分入れ込むのかも知れません。

 次号は3月刊行予定とのことで、続きが楽しみです。今号の記事「ニコラ・ド・クレシー ─ グラフィックの愉しみ」の文中には、なにげに「天空のビバンドム」のオチを示唆している箇所があるのですが(そんな大したものではありませんが)、最終的に○○○○○○うのは生首の語り部かはたまた無知に対する勝利を獲得すべく学業に励むアザラシのディエゴなのか、そしてそれはどのようにして起こるのかが気になります。


 マンガ大国日本では、外国漫画を翻訳刊行するというのは、過去の歴史に照らし合わせても非常に難しいことと思います。同じ漫画という形式であっても、日本の漫画を読むように外国のそれを読むようにはいかないですし。でも、それはどっちが良いとか悪いとかいう問題では無く、あくまでも世界が違うということなのだと思います。映画だって、駅前のTOHOシネマズでかかるものと、渋谷界隈の単館ロードショーでかかるものとでは、随分とおもむきが異なることでしょう。こうして翻訳がコツコツと刊行されていくことで、外国漫画というのがひとつのジャンルとして定着していったら良いなぁ、と思いました。

(12月29日、一部書き直し)

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2008年12月 9日 (火)

ネットで見かけたMoebiusの話題いくつか

 日本で有名なバンド・デシネ作家といえば、やっぱりMoebius(メビウス、またの名をJean Giraudジャン・ジロー)。というわけで、ネットで見かけたMoebiusに関する動画や漫画、話題をお伝えいたします。

▼Incal & Arzach trailers
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 youtubeにupされている、Moebius作品のパイロットアニメ。製作のいきさつ等はどこにも書いてありませんでした。『Incal』の方は、投稿者によると、Alejandro Jodorowsky(アレハンドロ・ホドロフスキー、原作のシナリオ執筆者)とMoebiusが関わっているそうなのですが、完成されなかったのがつくづく惜しまれます。『Arzach』の方は、投稿者は特に何も言っていないのですが、果たして完成版はあるのでしょうか…?日本でDVDが出ている『アルザック・ラプソディ』とは別物だと思うのですが…。

▼The story of an idea
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 スイスの赤十字社のサイトより。Moebiusの10ページの短編作品がpdfファイルでネットに上がっている!内容は、赤十字社及び赤新月社の誕生から現在に至るまでの活動について描かれたもの。短編アニメにもなっています(→こちら)。ネットに上がっているのは英語版ですが、漫画の冊子は英語・フランス語・スペイン語・アラビア語・中国語版が、アニメDVDは英語・フランス語・スペイン語・アラビア語がお取り寄せできるそうです(でも、注文画面を見ると、冊子にはアラビア語版は無い模様。それにしても、冊子は無料で注文できちゃうの…?)。ここは是非、日本語版も欲しいところなのですが…。

▼Salón Barcelona: Moebius
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 スペインはバルセロナでの漫画イベントにて、Moebiusインタビュー動画。スペイン語で会話しています。サイン会の模様も紹介されていて、イラストを描いているところも間近で見えます。こんな風に日本に上陸する日は、果たして来るのでしょうか……?


 また、この9月に創刊された、日本初のヨーロッパ漫画誌「euromanga(ユーロマンガ)」の公式サイト(→こちら)のニュース欄(→こちら)には、Moebiusの最新情報が載っていますよ(→こちら)!他にも、バンド・デシネ関連や掲載作の関連情報が刻々とupされている模様なので、これはマメにチェックしなくては!

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2008年2月25日 (月)

DYLAN DOG

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DYLAN DOG : LA SONRISA DE LA OSCURA DAMA
(ディラン・ドッグ:暗闇の婦人の微笑)
原題:DYLAN DOG : Il sorriso dell’Oscura Signora
シナリオ:TIZIANO SCLAVI(ティツィアノ・スクラヴィ)
作画:NICOLA MARI(ニコラ・マリ)
表紙:ANGELO STANO
表紙彩色:JESÚS HUGUET
(スペイン語版2004年刊、オリジナル(イタリア)2000年刊)

●スペイン語版版元Aleta Ediciones社の紹介ページ
●オリジナル版元イタリア・Sergio Bonelli Editore社の紹介ページ(英語)

 amazon.co.jp(→こちら)で見つけた、イタリアの人気漫画シリーズのスペイン語訳。縦21センチ×横16センチと若干小ぶりのサイズに白黒98ページで、この1冊でひとつのエピソードが完結しています。ロンドンに暮らし、悪夢の調査&探偵を職業とする、英国人男性Dylan Dogの物語。サスペンスドラマにつき、以下、肝心なところはボカしてはいるのですが、どうしても、わずかにネタバレを含みますので、どうかご注意下さい。



《あらすじ》
 若き美女Angel Claydon(アンジェル・クレイドン)は、原因不明の病に倒れる。殺し屋Chacal(チャッカル、英語で言うところのジャッカル)は、不可思議な事故で死んだかと思われたが甦る。Angelの父で政治家のJarvis Claydon(ジャルビス・クレイドン)は、女性霊媒師Loreen(ロレーン)の降霊術により、亡き妻から、彼の幼なじみのHarry Kopperman(ハリー・コッパーマン)を殺すよう告げられる。Angel Claydonは、妻が死んでから精神に異常をきたし、Loreenにのめり込む父を案じて、Dylan Dogに調査を依頼する。一方、Jarvis ClaydonはChacalにHarry Kopperman殺害を依頼する。そして…。
(……えー、英国が舞台の物語につき、人名の振り仮名は英語読みっぽくとりあえず書いてみましたが、合っているかは全く自信がありませんです…。)

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《感想など》
 超常現象を扱っているし異世界のキャラクターも出てくるので、オカルト色の強い物語かと当初は思っていたのですが、どちらかといえばリアリズム志向なのかな、と思いました。人間の心の愚かな部分が引き起こす、悲劇的で、かつ少々滑稽なドラマを描いています。個々の出来事が意外性の連続で、面白く読めました。案外読みやすかったのは、ドラマの構成がしっかり&スッキリしているからかも知れません。難を言えば、最後のオチにツッコミを入れたくなりましたが、娯楽性の高い読み物に対してあまり深刻に考えてもしょうがないかなぁ…。娯楽性の高いと言えば、Dylan Dogの助手でGroucho(グルーチョ)というオヤジが出てくるのですが、見た目といい言動といい、ちょっとイカレていて面白いです。誰か喜劇俳優にモデルがいるのでしょうか。

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 このシリーズ、ストーリーはずっと同じ人が執筆していて、作画は単行本によって異なるのですが、この単行本の絵は細密な線や人物の描き方がとても良かったです。とりわけ、死神や、その対極にある者の描写が秀逸。ちょっと印刷が悪いのが残念。

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2007年11月13日 (火)

「漫画」をスペイン語で何と言うか?

▼¿Por qué el nombre “Historieta”?”
(何故“Historieta”という名前なのか?)
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▼“La historieta en el mundo: El tebeo español”
(世界の漫画:スペインのtebeo)
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 「漫画」をスペイン語で何というか?以前、当ブログ2005年10月31日付け記事で手持ちの西和中辞典に載ってた「historieta(イストリエタ)」と「tebeo(テベオ)」の2つの単語の定義を引用しましたが、その後スペイン語の漫画関連サイトをあちこち眺めていると、「tebeo」の名前を冠していても紹介されている作品は大人っぽいものがある…。「historieta」と「tebeo」の使い分けは内容よりもむしろ、場所(ラテンアメリカとスペイン)なんじゃないか…。そんなことを思っていた矢先、その疑問を解決する日がやって参りました。EducaRed ArgentinaというサイトのHistorietas(漫画)コーナーの中に「El fascinante mundo de la historieta(漫画の魅惑的な世界)」というシリーズ連載があって、そこで「historieta」と「tebeo」について、それぞれのネーミングの由来を漫画で解説してありました。(「Virus Mental*」2007年9月26日付け記事で知りました。)

 要約しますと、「historieta(複数形はhistorietas)」は「historia(歴史、物語の意)」の縮小語、「tebeo(複数形はtebeos)」の由来はスペインのかつての人気漫画雑誌「TBO(テベオ)」。「TBO」の語源は「Te veo.(テ・ベオ、私は君を見ている)」なのですが、これを略して「TVO」と表記すると「テウベオ」と読まれてしまうから「TBO」と表記されたのだそうです。因みに、スペイン語のアルファベットでは、「B」は「ベ」、「V」は「ウベ」と読みます。英語と違い、どちらも「バ行」音で発音します。(参考文献:『はじめてのスペイン語』東谷穎人著、講談社新書)


 これだけでは簡潔過ぎますので、上でご紹介した2本漫画を翻訳してみました。ところどころ言葉を補ったり意訳したりしていますが、間違いがありましたらごめんなさい。やはり翻訳って難しいですね…。

--何故“Historieta”という名前なのか?--
(原案:B.D.、シナリオ:FABIO BLANCO、、作画:CACHO MANDRAFINA)
(1)手紙「拝啓、ホームズ様:何故Historietaという単語なのか、調査して頂きたいのですが」ホームズ「うーむ…これはベーカー街にしては異例の事件だな。」(2)イエロー・キッド「絵を連続させてひとつの物語を構成する、あまり重要とされない、簡略化した物語」ホームズ「おお、アイルランドの子供は辞書の定義を持ってきたか。」(3)リトル・ニモ「夢の世界では、はじめてのHistorietaは新聞の小さなスペースに登場したって言ってたよ、ボス。」ホームズ「考慮に入れとくよ、おやすみ。」(4)バスター・ブラウン「決定!」紙「Historia(歴史、物語の意)の縮小語。Historieta達はちっぽけな割り当ての中、新聞等の出版物のおかげで進化した。簡略化した続きコマ漫画は、やがてコミックブックやグラフィックノベルを育てた。教訓:Historietaは粗悪な意味の単語ではない。何故なら、大きな物語は沢山のより小さな物語で作られるから。」(5)君の決定を受け入れよう、バスター。しかし…君の犬を呼んでくれ…吠えないということは、噛み付くと推測するが…」(6)ワトソン「初歩(elemental)ですかな、ホームズ?」ホームズ「歯牙(dental)だよ、ワトソン君。」
--何故“TEBEO”なのか?--
(シリーズ原案:BANDA DIBUJADA、シナリオ・作画:JAN)
(1)作者「やあ…いや、私はTEBEOは描いてないよ。PAJARITA(パハリタ)を作っているだけさ…(注!…日本では"ORIGAMI"という。)」(2)さて行くか、着替えたよ…こんな風に。これで私はTEBEOの登場人物だ!」(3)「TEBEOは"TE VEO(私は君を見ている)"から来ているんだ。とはいえ、"V"の文字はこの場合"B(長いB)"と表記しているんだ。でないと"TEUVEO"になっちゃって(注!…スペインでは"UV"のことを"短いV"と言う)、うまくくっつかないんだ」(4)ナレーション「スペインで最も古い漫画雑誌のひとつが1917年に生まれ、TBOのロゴを冠しており、"TEBEO"という発音で読まれた。」作者「カフェオレ一杯とTEBEO一冊…」(5)作者「TBOという漫画雑誌は、我々の祖父母・両親・おじさんおばさんの時代にはとてもポピュラーだった。そして、その登場人物は当時の社会を反映していた。"LA FAMILIA ULISES(ユリセス一家)"なんかはずっと、最も親しまれたものだった…」窓口「どうぞ」(6)ナレーション「ちがう、TB0って言ったんじゃないよ、TEBEOって言ったんだ」窓口「?」(7)「現在、cómicsと言う方が多いだろうか…おそらく、よりモダンな響きがするからだろうか、しかし、どんな言葉がより格好いい言葉として残るだろうか?」作者「SUPERLÓPEZのTEBEO一冊。」窓口「えっと…これ?」

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2007年10月25日 (木)

「手裏剣スクール」その後

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 当ブログ2月28日付け記事5月12日付け記事でご紹介した、仏西合作TVアニメ「手裏剣スクール」のその後。日本ではトゥーン・ディズニーのJETIXで繰り返し再放送をしていて、おそらくフランスでも同様だと思うのですが、なにげにメディアミックスが進行中だったので、ご紹介します。

▼ノベライズに…
版元Hachette Livre社の紹介ページ

▼コミカライズに…
BD通販サイトBDnet.comの紹介ページ

▼長編アニメ化!!
DVD通販サイトDVD Sériesの紹介ページ

…3つめの長編アニメDVD、タイトルが「SHURIKEN SCHOOL - LE FILM」と書いてありますが、別にロードショー公開した訳ではなくて、日本で言うところのOVA。フランスではToussaint(万聖節)のバカンスの時期にFrance 3で放映するそうですよ(参考→xilam社のプレス記事)。先にDVDを出してからTV放映とは、日本の感覚で言えば順序が逆のような…。果たして日本で放映される日が来るのでしょうか?このDVD、2枚組の片方の「Making of (40 min.)」というのが気になっていて、買おうかなどうしようかなーと思案中です。

 ところでこのアニメ、日本では「フランスアニメ」と言われがちですが、正しくはフランス・スペイン合作アニメです。原案・キャラクターや背景のデザインはスペイン人、監督はフランス人、アニメ製作は恐らく共同…じゃないかな、クレジット等を見ていると。制作スタッフの中にはサンプル動画やデザイン画を公開する方もいらっしゃいましたので、ご紹介します。ケーブルTVやCS放送の視聴環境が無い方にも、このアニメの雰囲気が伝わるのではないかと思います。
▼サンプル動画(フランス人スタッフのブログ)
Winny Artblog
▼デザイン画(スペイン人スタッフのブログ)
JAVIER BOTET DIBUJO


 「手裏剣スクール」、私は線画のデザインや音楽が気に入っていて、一見、可愛らしくて楽しそうなアニメなのだけど、時々なにげにハラハラさせられて味わい深いです。一つには、シチュエーションに無理があるのに力ずくで「いい話」に落とし込む時。そしてもう一つは、日本の描写が多少変なのはご愛敬としても、時々「ん…?」と微妙な気持ちになる時。前者の例だと「なぜ湖に海賊船?」とか「二人立て続けに部屋に入ったのに、二人目だけドアに仕掛けた罠に引っかかるのはなぜ?」「50年前の卒業生のロッカーがそのままで残っている…?」とかツッコミながら見る楽しさもありますが、後者の方は「おにぎりの描写があんまりなのはマジなのかそれともワザと…?(あれ、お餅とご飯がミックスされていますよね)」とか「いじめっ子の名前が『テツオ』で大ぼらふきのニンジャマスターの名前が『オートモ名人』ってまさか…?」などと、深読みし出すともう心穏やかじゃない。このアニメの監督はかつて「Corto Maltese」のアニメ映画の監督をしていたのですが、その海外の公式サイトには過去の経歴に「フィリップ・カウフマン監督『ライジング・サン』のストーリーボードを手がけた」と書いてあるのに(→こちら)、日本の公式サイトでは削られている(→こちら)あたりがまた、ハラハラ感倍増。「ライジング・サン」って、日本を持ち上げているんだか落としているんだか、真面目なんだか笑わせようとしているんだか分からない、すごく変な(個人的には愉快な)映画でした。あの時の経歴がこの作品に生かされていたらどうしよう…。そんなことでハラハラしているのは地球上で私一人だけのような気もしますが、この気持ち、誰か分かってくれる人がいるかも知れないと思い、白状してみた次第であります。

 そんなハラハラはおいといて、お気に入りのエピソードを挙げるなら「メキシコの覆面男(An XXL Lie)」「スーパー・ニンジャ(Super Ninja)」「謎の小鳥(Funny Chick)」「失われた宝(The Lost Treasure)」の4本でした。「メキシコの覆面男」「失われた宝」は大風呂敷を広げた強引な展開と湖畔や港や船の描写、「スーパー・ニンジャ」は懐中電灯を振り回すと光がこぼれる場面の描写の繊細さ、「謎の小鳥」はピーちゃんの魔性さ加減が。

(11月9日、ちょっとだけ加筆修正)

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2007年8月23日 (木)

スペインの子供向けTV番組のサイトより

▼TVE - Programas Infantiles
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 TVE(スペイン国営放送)のサイト内の幼児・子供向けプログラムのページ。「series en emisión(放送中のシリーズ)」の中にサンプルアニメーションがupされているものがあったのでご紹介します。アニメがupされているのは、以下の3つ。
(受信や再生の重たいものは、IEのインターネット一時ファイルから取り出してゴニョゴニョ……)

●BERNI(flv形式、2~3分)…ちょっぴり不器用な白熊のBERNI(ベルニ)が、あらゆるスポーツに体当たりでチャレンジ。
●POCOYO(flv形式、6分ちょっと)…イマジネーションあふれる世界で繰り広げられる、好奇心いっぱいの小さな子供POCOYÓ(ポコジョ)の、新鮮な驚きと発見の数々。日本では「ぽこよ POCOYO」というタイトルでWOWOWで放映されているので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
●TOM(swf形式、1分40秒~2分弱)…巨大な恐竜のTOMとサーカス一座が世界中をめぐります。日本にも訪れていて、海辺の描写がなかなか。原作の絵本は過去に翻訳が日本で出版されました(→リサイクル絵本・アートブック専門店プレシャス ブックスの紹介ページの下の方に載っています)。近所の図書館に置いてあったので借りてみましたが、すっきりした描線とみずみずしい彩色でページ目一杯に描き込まれた絵が良かったですよ。TOMが船代わりの小島に乗って海をこいでいく姿がユーモラスなのと、ニューヨークのカッチリとしたビル群の描写が印象的でした。作者のDaniel Torres(→公式サイト)の代表作には「Roco Vargas」という漫画のシリーズ作品もあるのですが、そのご紹介は、また今度。

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2007年5月12日 (土)

手裏剣スクールのオリジナルFLASHアニメ

shuriken_tv.jpg
 2月28日付けのエントリでご紹介した、トゥーン・ディズニーのJETIX(ケーブルTVやCS放送)で放映中の「手裏剣スクール」について。あれから私、結構このアニメが気に入ってて毎週楽しみにしているのですが、日本ではネットの評判があまり思わしくないようで、残念でたまりません。英語圏では一時期「Naruto rip off(NARUTOのパクリ)」とか言われてたしー……「忍たま乱太郎」や「さすがの猿飛」なら分からないでもないですが(でも前者はおそらく海外では放映されてないだろうし、後者はちょっと古すぎますか)、そんなに似てるでしょうか「NARUTO」に。とりあえず、海外のナルト人気をあらためて実感したのは確か。いや、でもでも世界は広いし「手裏剣スクール」は対象年齢6-11歳という話だから、ネットには現れてこない反応だってあるかも知れません。

 さて、この「手裏剣スクール」、オリジナルはスペインのEmilio GALLEGO(エミリオ・ガジェゴ)とJesús GALLEGO(ヘスス・ガジェゴ)の兄弟が製作したflashアニメで、公式サイト「Gallego Bros Animacion」には「1994年創作、2000年12話をインターネットに、2002年コンセプトのTV化、2006年放映開始」と書いてありました。するとオリジナルのflashアニメが存在するのでは。しかしTV版が放映された現在、他のflash作品はupされていても「Shuriken School」だけはupされておらず……

 でも、そういう有名作品なら他のサイトにコピーがupされているもので、スペイン語のサイト「Zona Juego(ゲームゾーン)」に5つの話がupされていました。TVアニメ版と比べてみると、変わらない部分と変更点が興味深いです。それにしても、この作者は忍者のことや日本の美術についてよく勉強しているみたいですね。そして、TVアニメ化されて90ヶ国以上から放映の引き合いが来たというのは何ともスケールのでかいサクセスストーリーです。
shuriken_origin.jpg
●1.PRUEBAS DE SELECCION(選考試験)
●2.LA PRIMERA CLASE(最初の授業)
●3.LA LEYENDA DE KOJI MURASAKI(コージ・ムラサキの伝説)
●4.KATANA SCHOOL(刀スクール)
●5.CLASE AL AIRE LIBRE(野外授業)

 で、TVアニメシリーズについては公式サイトが沢山あったので、主なものを挙げてみます。個人的には、全体的な紹介が見やすいshurikenschool.fr、エピソードリストが掲載されているカナダのYTVのサイトの2つが便利でした。
●shurikenschool.fr
●shurikenschool.com
●フランスの製作会社xilamの特設サイト
●カナダのTV局YTVの特設サイト
●イギリスJETIXの特設サイト

 なお、TVアニメ化にあたっては理不尽な検閲もあったそうで、フランス人スタッフのインタビュー記事によると、その一つの事例として、メインキャラクターの一人がクッキーを食べているシーンが、間食は肥満防止の妨げになるという理由からサラダを食べる場面に差し替えられたのだそうです。そういえば、変な葉っぱを手づかみでムシャムシャ食べているシーンがあって「日本の食習慣が間違って伝わったのでは…?」と思ったことがありましたが、そのシーンのことでしょうか。やはりフランスは細かいことに厳しいですね。他にもこういった事例があるそうですが、もともとの設定にシュールなところがあるので、どの辺が検閲の結果なのか興味のあるところです。


《2008年1月30日追記》
その他の国々の公式サイトへのリンクも載せてみます。
Nickelodeon(USA)
TOONWAM France 3(フランス)
Jetix(スペイン)
Jetix(南米スペイン語圏)
Jetix(ブラジル)
Jetix(ハンガリー)

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