ドイツ(及び独語圏)

2005年12月13日 (火)

スイス・コミックアート展に行ってきました

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 シンポジウム目当てで神奈川県は川崎市民ミュージアムで催されている「スイス・コミックアート展」に行ってきましたので、簡単にご報告や感想など。


 まず展覧会なんですが、メインの展示として、スイスの漫画家12人と日本の漫画家5人について、壁には「時間」をテーマにした描き下ろしの1枚ものの作品を展示し、ショーケースには単行本を広げて並べていました。スイス人作家の作風はといえば、シンプルで抽象的なものから線を多く書き込んだシビアなものまでさまざま。描き下ろしの作品は外国人に見せることを前提としているためか、どれもセリフはなく、絵に力を込めているようでした。しかし、これらのスイスの作家陣(及びしりあがり寿氏)の絵は良く見ると原画じゃなくて印刷っぽい……何だか大物ミュージシャンが来日してTV番組で口パクで歌ってるのに気づいた時のような、しんみりした気持ちになってしまいました。

 それにしても正直なところ、一枚の書き下ろしと単行本の見開きページだけで未知の漫画家の世界を紹介するのは厳しいと感じました。情報ばかりが先行すると、読んで楽しむという漫画の本来の楽しみからは遠ざかってしまいそうで。とりあえず有名作家の名前と作風、そしてパネル展示からスイスの漫画の歴史や現在の状況を何となくつかめたかな…?今後、何かしら読む時の参考にできればと思いました。展示作家の中では、Cosey(コゼイ)氏の作品が良かったです。この方はアングレーム国際BDフェスティバルで1982年に最優秀アルバム賞を受賞するなど(→こちら)、結構ベテランの方なのですね。

 次にシンポジウム。こちらのリンク先には午後2時からと書いてあったので間違えそうになりましたが(トップページには1時からと書いてありましたが)、他にそのような方はいらっしゃらなかったでしょうか。ネットではあまり話題になっていなかったので空いているかと思いきや、補助椅子が沢山必要になる位の盛況ぶりでした。名だたる漫画評論家の方々や漫画研究を志す学生さんが大勢いらっしゃっていたようでした。


 プログラムはマンガ学会のこちらのページをご参照下さい。中でもとりわけ、スイスのドイツ語圏の漫画雑誌「シュトラパツィーン」編集部のクリスティアン・ガッサー氏のお話が興味深かったです。(『シュトラパツィーン』誌のサイトは、こちらこちらで良いのかな…)私はてっきり、スイスは公用語が4つに分かれているから同じ出版物もも4種類刷らなきゃいけないのかと思っていたのですが、決してそんなことはなくて、言葉が違っていれば文化的にも分断されてしまうのですね。フランス語圏では、ジュネーブがコミック発祥の地(ロドルフ・テップフェールRodolphe Töpffer(1799-1846)による『版画文学"histoire en estampes"』と呼ばれる絵物語)にもかかわらず、本格的なスイス人作家の活躍はベルギーにおけるDerib(デリブ)氏やその弟子Cosey氏以降であるとのこと。一方、ドイツ語圏では従来コミック文化は無いも同然だったのが、1984年にチューリヒで「シュトラパツィーン」誌が創刊し、表現主義的・個性的・実験的なコミックが掲載されてきたとのこと。そして、こうした独・仏双方の言語圏の作家は近年、展覧会や出版による交流が図られているものの、翻訳のコスト等問題点も存在するとのことでした。やっぱり言葉の壁は大きいのですね。

 その他、森田直子氏によるテップフェールの「版画文学」における「観相学」の影響や近年のコミック作家の顔の描写に関する話、神尾達之氏による、戦後日本のマンガに見られる死の表現がもたらす記号世界への破綻や最近のマンガに目立つ傾向についての考察等、普段あまり耳にしないアカデミックな話が聞けて、貴重な一日でした。

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2005年8月31日 (水)

スイス・コミックアート展

スイス・コミックアート展
平成17年9月16日(金)~12月25日(日)
川崎市市民ミュージアム 2階ギャラリー

 マンガ学会ホームページ「新刊・イベント情報」で知りました。

 「現代スイスを代表するコミックアーティスト12名を紹介します」とのことで、以下のお名前が挙げられていました。

■現代スイスコミック・アーティスト
 当コーナーでは、現代スイスを代表するコミック・アーティスト12名をご紹介します。
彼らがこの展覧会のために描き下ろした1ページの作品「時間」をはじめ、アーティスティックでカラフルなアルバム(単行本)を展示、解説いたします。
(参加作家:コゼイ COSEY、マティアス・グネーム MATTHIAS GNEHM、ミックス&レミックス MIX & REMIX、ノワイヨ NOYAU、トーマス・オット THOMAS OTT、フレデリック・ペータース FREDERIK PEETERS、ナディア・ラヴィショーニ NADIA RAVISCIONI、ヘルゲ・ロイマン HELGE REUMANN、アナ・ゾマー ANNA SOMMER、トム・ティラボスコ TOM TIRABOSCO、ワゼム WAZEM、ゼップ ZEP)

 ZEP(ゼップ)という方は、バンド・デシネの大ヒット作「Titeuf」の作者ですね。2004年にアングレーム国際漫画フェスティバルでグランプリを受賞し、2005年のポスターのイラストを描いていました。(→こちら
 また、WAZEM(ワゼム)という方は最近、故Hugo Prattの作品「Les Scorpions du désert」の続編を刊行し、その紹介が、OVNI〈オヴニー、パリの日本人向けフリーペーパーで、日本でも配布してます〉のサイトに載っていました。(→こちら

  その他の作者の名前も検索してみたのですが、検索先のページが、主にドイツ語の人とフランス語の人とに分かれるようでした。スイスの公用語は、フランス語・ドイツ語・イタリア語・ロマンス語の4つだそうですが、言葉の異なる者どうしでは、どの程度コミュニケーションできるのだろう。


 ところで、スイスでも日本のマンガは人気があるようで、以前、こんなイベントをやっていました。
 湖畔の街におたく5000人集結――スイス初の大規模マンガイベント
 今年の4月下旬、レマン湖畔の街ローザンヌで開催された「ポリーマンガ(polymanga)」というイベントだそうで、公式サイトがこちら(→Polymanga(フランス語英語)にありました。(フランスのアニメ情報サイトCatsuka Newsの3月31日付け記事で知りました。)

 2種類のポスターの内、下の方のイラストには、日本の有名なマンガのキャラクターが可愛く描かれています。でも、画面中央の女の子のファッションの和風テイストには、ちょっぴり違和感があるかも…


【追記】2005年12月13日付け記事に行ってきた感想を書きましたので、良かったらそちらもご覧下さい。

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