イタリア

2009年9月16日 (水)

Corto Maltese : Sous le signe du Capricorne

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Corto Maltese : Sous le signe du Capricorne
(コルト・マルテーズ:山羊座の下に)
作:Hugo Pratt(ユーゴ・プラット、1927-1995)
Casterman社、2001年刊
初出:Pif gadget 1970年 58,59,66,75,82,89号
(初出は→こちらを参考にしました)

《あらすじ》
I Le secret de Tristan Bantam(1.トリスタン・バンタムの秘密)
 オランダ領ガイアナのパラマリボにて。Corto Maltese(コルト・マルテーズ)は、Madame Java(ジャバ婦人)の宿に滞在していた。そこに、イギリスはロンドンからTristan Bantam(トリスタン・バンタム)という少年が訪れる。来訪の目的は、異母妹に会うことと、亡くなった父が残した古文書の謎を突き止めることだった。Cortoは、プラハから亡命した考古学者のSteiner(シュタイナー)と共に、Tristanをサポートする。そこに、異母妹のMorgana(モルガナ)の使いで魔術使いの女性や、Tristanの命を狙う者が現れ…

II Rendez-vous à Bahia(2.バイーアでのランデヴー)
 Corto、Tristan、Steinerの3人は、Morganaに会うために航路ブラジルのバイーアへ向かう。中途立ち寄った島で脱走犯Cayenne(カイエンヌ)と出会い、彼をかくまうカリブの先住民族達の呪術を目の当たりにする。Cayenneを加えた一行は、Morganaの邸宅へと到着する…

III Samba avec Tir Fixe(3.ティール・フィックスとのサンバ)
 Corto、Tristan、SteinerはMorgana達と共に、Morganaの魔術の師匠であるBouche Dorée(ボシュ・ドレー、黄金の唇)へと会いに行く。Bouche Doréeは、Cortoの母親である"Niña de Gibraltar(ニーニャ・デ・ジブラルタル、ジブラルタルの瞳)のことを良く知っていた。また、Bouche Doréeは、Cortoに一仕事を頼む。その内容は、白人の圧政に対して武装蜂起をした“カンガセイロ”と呼ばれる人々へ救援物資を運ぶことだった。現地では、殺された首領の代わりに、Tir Fixe(ティール・フィックス)が陣頭指揮をとっていた…

IV L'aigle du Brésil(4.ブラジルの鷲)
 Bouche DoréeのもとでくつろいでいたCortoだが、Tristan、Steinerと共に出発し大西洋を北上する。時は第一次大戦下、連合軍の船舶ばかりが遭難する海域があった。Corto達は漂流するヨットを発見し、大怪我をした漁民を助ける。その近くの島に上陸すると…

V ... Et nous reparlerons des gentilshomm es de fortune(5.そして、海賊達のことを再び話そう)
 Corto、Tristan、Steinerは、或る小島にいる。そこにはスペインの海賊が盗んだ黄金が隠されているという。その隠し場所は、鯨の骨で出来たトランプのカードのエースに刻まれていて、4枚揃うと分かるという。クラブのエースのカードを持つCortoは、海賊の子孫の女性に会いに行く。女性はダイヤのエースを持っていて、更に、ハートのエースを持つRaspoutine(ラスプーチン)に再会し…

VI À cause d'une mouette(6.1羽のカモメのせいで)
 海岸に漂着したCortoは記憶を失っていた。敬虔なキリスト教信者の白人女性Soledad Lokäath(ソレダ・ロカース)に敵と間違って撃たれた後、保護される。Soledad Lokäathは従者である先住民族の男性Jésus-Marie(ヘスス・マリエ)と暮らしているが、辺りをつけ回す男や彼をかばう司祭がいて…


《感想など(かすかにネタバレ有り》
 当ブログで頻繁に話題にしている「Corto Maltese」シリーズの第2巻。このシリーズはカラー、モノクロ、小型本と様々なバージョンが存在し、また、最近リニューアル版が刊行されている模様なのですが、当ブログで取り上げるのは“全12巻バージョン”ということで、どうぞよろしくお願い致します。第2巻から、Cortoの本格的な冒険の旅が始まります(掲載誌も、フランス語圏へと進出しています)。南米を舞台に、植民地や人種問題、戦争を背景に、時に神秘的体験を交え、読者はぐいぐいと未知の世界へと引き込まれていきます。黒人の描写などは、差別が厳しかったであろう1970年発表当時には斬新だったかも知れません。地名や歴史上の出来事、呪術に関連した固有名詞などが多く出てくるので読むのに結構難儀したのですが、ネットで検索すると日本語でも情報が出てくるので助かりました。

 大海原を航海するCorto Malteseの冒険は、一見、颯爽として格好良さそうにも見えますが、単にそれだけの話ではありません。人々の思惑に翻弄され、助けたかった人は助けられず、宝物は手に入らず、海賊の過去は蒸し返され、時に昔の仲間が現れて危険で魅力的な冒険へといざなう。多くの困難が待ち受けている中、己を信じて遠くを見据え、自分の道を切り開いていくCortoの行く先を、これからも少しずつ見届けていこうと思います。

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2008年12月20日 (土)

Euromanga Vol.1(ユーロマンガ 1号)

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Euromanga Vol.1(ユーロマンガ 1号)
(飛鳥新社、2008年9月刊)
●公式サイト

 今年の9月に創刊した、日本初のヨーロッパのマンガ、バンド・デシネの専門誌。現地で既に好評を博している作品をセレクトして、複数回に分けて掲載していくとのこと。日本にBDを紹介するにあたって、あえて「Euromanga」という呼称を用いているのだとか。創刊号に掲載されているのは「SKY-DOLL(スカイ・ドール)」「RAPACES(ラパス)」「BLACKSAD (ブラックサッド)」「BIBENDUM CELESTE(天空のビバンドム)」の4作品。1500円というリーズナブルな価格なのに、フルカラーでゴージャスな誌面です。

 マンガ以外の記事は「ユーロマンガの世界へようこそ!!」「ニコラ・ド・クレシー ─ グラフィックの愉しみ」「Euromanga の友達」の三本立て。とりわけ一つめの記事は、バンド・デシネの特徴や歴史や代表作、及び日本での紹介事例について、わかりやすくコンパクトにまとめてあり、とても参考になりました。


 4つの作品のうち「スカイ・ドール」「ブラックサッド」「天空のビバンドム」は、個人ブログで紹介されていたり、邦訳が出ていたり、同じ作者の別作品が書籍に掲載されていたりと、日本でもその評判が知られているものでしたが、「ラパス」だけは恐らく今回が初上陸であり、現地からあえて紹介したかった作品なのではないかと思われます。私は、作画のスイス人エンリコ・マリーニ(Enrico Marini)が描く予定の「Corto Maltese」(→Le Figaroの記事)が気になっていますので、いつか誌面で取り上げて下さると有り難いです。

 今号でセレクトされた4作品は、どれも設定が凝っているし、絵も素晴らしく、綺麗な彩色で十分に堪能できました。ただ、セリフやモノローグが日本語で書かれているとはいえ、もともとの文章が長いせいもあり、作品世界に入り込むのにちょっと手間取りました。これは私の個人的事情かも知れませんが、日本語で書かれていると、つい、日本のマンガを読むようなリズムで、急いで読もうとしてしまうからなのかも知れません。また、私がこれまで翻訳書を読みつけていなかったせいもあるかと思います。日本語の文章だと頭から読むけど、原文だと、固有名詞→主語→動詞→目的語→修飾語といった感じに、自分で意味を拾いに行くし、辞書を引き引き一語一語刻むように読み込むから、時間はかかるけどその分入れ込むのかも知れません。

 次号は3月刊行予定とのことで、続きが楽しみです。今号の記事「ニコラ・ド・クレシー ─ グラフィックの愉しみ」の文中には、なにげに「天空のビバンドム」のオチを示唆している箇所があるのですが(そんな大したものではありませんが)、最終的に○○○○○○うのは生首の語り部かはたまた無知に対する勝利を獲得すべく学業に励むアザラシのディエゴなのか、そしてそれはどのようにして起こるのかが気になります。


 マンガ大国日本では、外国漫画を翻訳刊行するというのは、過去の歴史に照らし合わせても非常に難しいことと思います。同じ漫画という形式であっても、日本の漫画を読むように外国のそれを読むようにはいかないですし。でも、それはどっちが良いとか悪いとかいう問題では無く、あくまでも世界が違うということなのだと思います。映画だって、駅前のTOHOシネマズでかかるものと、渋谷界隈の単館ロードショーでかかるものとでは、随分とおもむきが異なることでしょう。こうして翻訳がコツコツと刊行されていくことで、外国漫画というのがひとつのジャンルとして定着していったら良いなぁ、と思いました。

(12月29日、一部書き直し)

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2008年12月 7日 (日)

「PIMPA」のイタリアUNICEFポスター

▼"In viaggio con la Pimpa: alla scoperta dei diritti delle bambine e dei bambini"
(「ピンパとの旅で:児童の権利について知ろう」)
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(参照元:afnews.info

 かつて、NHK教育テレビ「イタリア語会話」の中でショートアニメが放映されていた、イタリアの漫画『PIMPA(ピンパ)』。イタリアのUNICEFは、11月20日、子供の権利条約の日に、この『PIMPA』を用いた、作者Francesco Tullio Altan(→lambiek.netによる紹介)の協力と、出版エージェンシーQuipos(→公式サイト)の許諾に基づく出版プロジェクトを発表したそうです。

 その中身は、PIMPAが出会う10の場面から、権利についてわかりやすく学ぼうというもの。その10の場面のテーマを辞書で引いてみたところ「Uguaglianza(平等)」「salute(健康)」「istruzione(教育)」「gioco(遊び)」「identità(アイデンティティ)」「partecipazione(参加)」「disabilità(身体障害)」「minoranze(マイノリティ)」「protezione(保護)」「nutrizione(栄養)」だそうです。

 上記ユニセフのページには、PIMPAの折りたたみポスターがpdfファイルでupされていて(→こちら3.64MB)、これがなかなか可愛いいですよ。10の場面が描かれ、その傍らにPIMPAのセリフとキャプションが付いています。

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2008年11月14日 (金)

「Corriere dei Piccoli」100周年!

▼Gianfranco Goria's comic art photos slideshow
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(スライドショー単体のアドレスは→こちら
参照元:100 anni del Corriere dei Piccoli, in mostra!afnews.infoより)


 「Corriere dei Piccoli(小さな子供達の雑誌)」とは、イタリアで1908年12月から1995年8月まで刊行された、子供向けの週刊漫画雑誌(参考→こちら)。今年が創刊100周年で、イベントが開催されたり、アンソロジーが刊行されたり(→こちら)するそうです。

 冒頭に挙げたリンク先には掲載作の画像が沢山紹介されていて、見応えがあります。日本でもおなじみの「トッポ・ジージョ(Topo Gigio)」や、数年前NHK教育テレビ「イタリア語会話」内でアニメが放映されていた「ピンパ(Pimpa)」といった可愛いものもあれば、Hugo Pratt(ウーゴ・プラット)やSergio Toppi(セルジオ・トッピ)の込み入った絵もあり、バラエティに富んでいます。


(ブログ主補足)
 Hugo Prattの読み仮名を、当ブログではこれまで、日本で公開されたアニメ映画にならって「ユーゴ・プラット」と表記していたのですが、ここでは、やはりイタリアの雑誌の話題につき、イタリア語発音で表記することにしました。

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2008年2月25日 (月)

DYLAN DOG

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DYLAN DOG : LA SONRISA DE LA OSCURA DAMA
(ディラン・ドッグ:暗闇の婦人の微笑)
原題:DYLAN DOG : Il sorriso dell’Oscura Signora
シナリオ:TIZIANO SCLAVI(ティツィアノ・スクラヴィ)
作画:NICOLA MARI(ニコラ・マリ)
表紙:ANGELO STANO
表紙彩色:JESÚS HUGUET
(スペイン語版2004年刊、オリジナル(イタリア)2000年刊)

●スペイン語版版元Aleta Ediciones社の紹介ページ
●オリジナル版元イタリア・Sergio Bonelli Editore社の紹介ページ(英語)

 amazon.co.jp(→こちら)で見つけた、イタリアの人気漫画シリーズのスペイン語訳。縦21センチ×横16センチと若干小ぶりのサイズに白黒98ページで、この1冊でひとつのエピソードが完結しています。ロンドンに暮らし、悪夢の調査&探偵を職業とする、英国人男性Dylan Dogの物語。サスペンスドラマにつき、以下、肝心なところはボカしてはいるのですが、どうしても、わずかにネタバレを含みますので、どうかご注意下さい。



《あらすじ》
 若き美女Angel Claydon(アンジェル・クレイドン)は、原因不明の病に倒れる。殺し屋Chacal(チャッカル、英語で言うところのジャッカル)は、不可思議な事故で死んだかと思われたが甦る。Angelの父で政治家のJarvis Claydon(ジャルビス・クレイドン)は、女性霊媒師Loreen(ロレーン)の降霊術により、亡き妻から、彼の幼なじみのHarry Kopperman(ハリー・コッパーマン)を殺すよう告げられる。Angel Claydonは、妻が死んでから精神に異常をきたし、Loreenにのめり込む父を案じて、Dylan Dogに調査を依頼する。一方、Jarvis ClaydonはChacalにHarry Kopperman殺害を依頼する。そして…。
(……えー、英国が舞台の物語につき、人名の振り仮名は英語読みっぽくとりあえず書いてみましたが、合っているかは全く自信がありませんです…。)

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《感想など》
 超常現象を扱っているし異世界のキャラクターも出てくるので、オカルト色の強い物語かと当初は思っていたのですが、どちらかといえばリアリズム志向なのかな、と思いました。人間の心の愚かな部分が引き起こす、悲劇的で、かつ少々滑稽なドラマを描いています。個々の出来事が意外性の連続で、面白く読めました。案外読みやすかったのは、ドラマの構成がしっかり&スッキリしているからかも知れません。難を言えば、最後のオチにツッコミを入れたくなりましたが、娯楽性の高い読み物に対してあまり深刻に考えてもしょうがないかなぁ…。娯楽性の高いと言えば、Dylan Dogの助手でGroucho(グルーチョ)というオヤジが出てくるのですが、見た目といい言動といい、ちょっとイカレていて面白いです。誰か喜劇俳優にモデルがいるのでしょうか。

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 このシリーズ、ストーリーはずっと同じ人が執筆していて、作画は単行本によって異なるのですが、この単行本の絵は細密な線や人物の描き方がとても良かったです。とりわけ、死神や、その対極にある者の描写が秀逸。ちょっと印刷が悪いのが残念。

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2007年11月17日 (土)

「漫画」をイタリア語で何というか?そして他の国では?

▼“La Historieta en el mundo: El Fumetto italiano”
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 前回の記事では、「漫画」のスペイン語訳とその語源について、アルゼンチンのEducaRed ArgentinaというサイトのHistorietas(漫画)コーナーの中にある「El fascinante mundo de la historieta(漫画の魅惑的な世界)」というシリーズ連載を元にご紹介しました。今回は引き続き、漫画のイタリア語訳について、ご紹介します。

 「漫画」をイタリア語では「fumetto(フメット)」、複数形なら「fumetti(フメッティ)」と言い、その語源は、日本では「吹き出し」と呼ばれる雲のような形をしたものが「fumo(湯気、煙)」みたいだからだそうです。


 では、前回同様、上記画像の漫画を翻訳してみましたので以下に記します。

--何故fumettiなのか?--
(このシリーズの原案:BANDA DIBUJADA、シナリオと作画:BRUNO OLIVIERI)
(1)「やあ、僕の名前はブルーノ。イタリアに住んで、仕事しているんだ。」「そして、僕は漫画の作画家なんだよ!」(2)「ところで…僕の国では漫画の事を何故“fumetti”って呼ぶのか知ってますか?」(3)「何故なら、その名前は、様々な登場人物から発せられた言葉の入った“雲”に由来するからなんだ。」(4)「それらは英語だと“BALLOONS(球、気球)”と呼んでいて、小さな“FUMO(煙)”の雲みたいなものだ。まさに“fumetti”!!」(5)「アメリカンインディアンもまた、お互いに連絡し合うのに“煙の雲”を使っていた。僕がやっているようにね!!」「ねぇねぇねぇ、僕もまたちょっとしたインディアンの気分さ。」「ああっ!」「話は変わって、これは“ONOMATOPEYA(オノマトペ)”と言うんだ。その名前は、ギリシャ語の“ONOMA(名前)”と“POIEO(私は振る舞う、行動する)”に 由来するんだよ。」「でも、これはまた別の話だね!」「終」

 そして、この漫画に付けられた解説文には、各国の「漫画」の呼び名が載っていて興味深かったので、その部分を以下に翻訳してみます。

 漫画は、世界中の様々な場所で色々な名前を持っています。英語が話される国では“Comic(コミック)”、スペイン語(カスティーリャ語)では“Historieta(イストリエタ)”という言葉が生まれ、“Bande Dessineé(バンド・デシネ)”はフランス、“Manga(マンガ)”は日本、“Quadrinhos(クアドリノス?)”はブラジル、“Tebeos(テベオス)”はスペイン、“Comiquitas(コミキータス)”はいくつかの中米とメキシコで、“Tirillas(ティリージャス)”はプエルトリコで、“Muñequitos(ムニェキートス)”はキューバ、等々。
 イタリアではそれは“Fumetto(フメット)”と呼ばれ、複数形は“Fumetti(フメッティ)”です。
 活動団体Banda Dibujada(バンダ・ディブハーダ)は、世界中の漫画家に対して、各々の国ではそういった種類のものを“何て”“何故”呼ぶのかを語って貰おうという目的を持って、コンタクトをとり始めました。
 この「Banda Dibujada」とは、アルゼンチンで生まれた文化活動団体で、子供のための漫画の創作・出版・普及を支援するものだそうです(参考→こちら)。いつか、このシリーズに日本の「マンガ」の語源に関する漫画や解説も載る日が来るのでしょうか。

(12月4日、訳文をちょこっと修正しました。スペイン語の『humo(煙、湯気)』と『nubes(雲の複数形)』を混同している部分があったので。)

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2007年5月20日 (日)

NHK教育テレビ「イタリア語会話」のテキストにて

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 昨年からNHK教育テレビ「イタリア語会話」のテキストに連載されている、イタリアはボローニャ在住の漫画家・市口桂子さん(→公式サイト)のエッセイ漫画が面白くてこれまで立ち読みしていたのですが(すみません)、4~5月号を買ってみたのでご紹介いたします。

 市口さんは1980年代末に少女漫画雑誌でデビュー、いくつかの連載や単行本を刊行し、イタリアに渡って現在は漫画家業および文筆業をされているとのこと。「イタリア語会話」のテキストのエッセイ漫画は昨年の4月号から連載されていて、ここ最近の号では、現地の出版社へ原稿を持ち込み、打ち合わせをする様子が描かれていました。

 そして、今年の4月号ではそのイタリア人に向けて描いた漫画の本が刊行されて、見本市に出展したときのカルチャーショックが描かれています。1990年代半ば、イタリアでは日本の漫画=エロ漫画と認識されていて、少女漫画(Shojo-manga)と言っても通じず、イタリアで翻訳されたエロ漫画の本を見せられてメゲるまでが4月号のお話。でも5月号になると、イタリアでも日本のTVアニメ(ルパン3世、キャプテンハーロック、ガンダム、トトロ…)が浸透して、イタリア人の日本の漫画に対するイメージも変化していく様子が描かれています。現在、イタリアやフランスの漫画サイトで市口さんの話題をよく見かけますし、日本のMANGA関連のイベントの話題もよく見かけます。今後の連載で、その辺りがどのように描かれていくのか楽しみです。

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2006年12月17日 (日)

Sgt. Kirk(Sargento Kirk)

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 前々回のエントリで取り上げた「Corto Maltese:La ballade de la mer salée」の初出誌「Sgt. Kirk」について。この雑誌は1967年から70年代にかけて発行されたものですが、今でもイタリアのebayでよく見かけます。誌名「Sgt. Kirk」のもととなったのは、Hugo Prattが在アルゼンチン時代の1950年代に描いた西部劇「Sargento Kirk(カーク軍曹)」です。シナリオはHéctor Germán Oesterheld(1919-1977)。スペインのebayでは、ときどき掲載誌「Hora Cero(ゼロ・アワーの意)」を見かけます。

 アルゼンチンの漫画情報サイト「HISTORIETECA」内の「Biografía de Oesterheld」によると、「Sargento Kirk」の初登場は雑誌「Misterix」1953年、225号。その後、様々な雑誌媒体で長期にわたって連載された人気作品だったそうです。
 Kirk軍曹はもともとは米国の第七騎兵隊の兵士。だけどインディアンの虐殺の現場に嫌気がさして脱走し、インディアンを支援する。1950年代当時の西部劇の約束事とは異なった視点とリアリズムを伴った、革新的な作品だったそうです。

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 でもこの作品、読みたくても現在では入手が困難です。以前、amazon.co.jpで買ったのは小説版でした。漫画版の方はイタリアでもフランスでも絶版状態、最近アルゼンチンで抜粋の廉価版が出た模様ですが、ネット通販サイトで売っているところが見つからないんですよね…

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 BD情報誌「BANG!(2005年、第3号)」のCorto Maltese特集によると、CongSA(Hugo Prattの遺産を管理している会社)で復刊の取り組みはしているそうです。ページ数が膨大でフォーマットが不揃いなために困難だという意見もあるようですが、せめて、過去にLes Humanoïdes Associés社から出ていたもののリプリントを出して欲しい…

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 また、BD情報誌「Bodöi hors série(Bodöi増刊、2002年、第5号)」のHugo Pratt特集には「Sgt. Kirk」誌の発行人であるFlorenzo Ivaldi氏のインタビューが載っていて、当時に関する本を執筆中とのことでした。刊行のあかつきには表紙画像の再録を是非お願いしたいところです。

 Hugo Prattの水彩画は魅力的なものが多いので、たとえ本体が手に入らなくても画像が見たくて、これまでいろんな国の通販サイトやファンサイトをのぞいていました。が、最近になって、最強のHugo Prattファンサイトが誕生しました。アルバムや掲載誌等の画像、リンク集等盛りだくさんです。興味を持たれた方は要チェックですよ!→「Les archives Hugo Pratt」

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2006年12月13日 (水)

Corto Maltese : La Ballade de la mer salée (dessin-animé)

Corto Maltese : La Ballade de la mer salée (dessin-animé)

Corto Maltese : La Ballade de la mer salée (dessin-animé)
監督:Richard Danto, Liam Saury
(2002年、フランス、イタリア、ルクセンブルグ)

 前回のエントリで取り上げた作品のアニメ版。「Corto Maltese」のシリーズには、日本でアニメ映画が公開されたもの(→公式サイト)もありましたが、それとは別にTVアニメシリーズが存在するのです。以前、こちらにまとめたことがありました。で、これはその第1話のフランス版DVDです。このTVアニメシリーズ、イタリアのTV放映情報では毎週90分全8回全10話と書いてあった筈…なんですが、発売されたDVDの情報によると、結局、長いの(90分)が4本と短いの(60分)が2本、制作された模様です。当時長いのが単品で発売されたのでちびちびと3本買っていたところ、DVDボックスが発売。短い方はボックスにのみ収録と知らされた私の立場をどうしてくれましょう。いや全巻揃えるつもりは無かったけれども…

La Ballade de la mer salée (dessin-animé)

 感想はと言えば、TV版は映画版と比べると作りが安くて、正直言ってあまり良い出来とは言えません。音楽や背景の美術は良いのですが、人物の絵と動きがいまひとつ良くないです。ただ、原作をアニメ化する際にどこを削ってどこを補うかという点では面白いアレンジをしていたので、個人的には気に入っています。この第1話については、Escondida島の島民の描写を増やしているのが興味深かったです。セリフはところどころ原作と同じなので、それを頼りに聞き取ろうとしています。原作と違う部分はお手上げなんですが、繰り返し聞いていると(時々BGM代わりに聞いています。音楽が盛り上げるので、ドラマチックでわくわくします。)たまに聞き取れることもあり、そんな時はすごく嬉しいものです。

 本国の「Corto Maltese」公式サイトでは、左下のスピーカーのマークをいじるとアニメのサウンドトラックが聞けます。約30分強と太っ腹なサービスであります。音楽を単体で聴いても、色々と喚起されるものがあります。音質が良くないのが残念ですが、そこまで贅沢を言ってはいかんですね。それにしても、未だにTV版の情報が載ってないのは何故…?

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2006年12月 4日 (月)

Corto Maltese:La ballade de la mer salée

▼仏語版▼英語版
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Corto Maltese:
La ballade de la mer salée
(仏語版、casterman社、2000年刊)
Ballad of the salt sea(英語版、the harvill press社、1996年刊)
(コルト・マルテーズ:塩辛い海のバラード)
作者:Hugo Pratt(ユーゴ・プラット、1927-1995)
初出:「Sgt. Kirk」No.1(1967)-No.20(1969)(イタリアの雑誌、原題:Una ballata del mare salato
(初出のデータは、こちらのページを参考にしました)


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《あらすじ》
 1913年11月から1915年1月にかけて、世界最大の海・太平洋で起こった出来事。
 Raspoutine(ラスプーチン)を船長とする双胴船がオセアニアを航海中、難破船に遭遇する。生存者はいとこ同士の少年少女で、名前はCaïn(カイン)とPandora(パンドラ)と言った。Corto Maltese(コルト・マルテーズ)はRaspoutineと共に、オセアニア周辺海域(フィジー、サモア、トンガ…etc.)の原住民を船員に用いて船舶を襲って燃料や金品を奪う、いわゆる海賊だった。CaïnとPandoraは身代金目当ての人質として監視下に置かれる。
 海賊の頭領は「Le Moine(モワーヌ、修道士)」と呼ばれる、頭巾で顔を隠した謎の西洋人。誰も知らない秘密の島「L'Escondida(エスコンディーダ、スペイン語で"隠れた(英語で言うところのhidden)"の意味)」を根城に、原住民を近代兵器で武装させて、王として君臨していた。
 Moineは第一次大戦直前のドイツ軍と手を結び、イギリス船を襲撃して得た石炭や基地用の土地を提供することになった。ドイツ軍からはSlütter中尉(スリュッテール)が派遣される。
 こうしてEscondida島を舞台に、様々な国家・民族の人々が集結し、対決やドラマが生まれる。しかし、やがてイギリス軍にその存在を知られることになり…


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《感想など》
 「Corto Maltese」はイタリアやフランスを始めとする、ヨーロッパで人気のシリーズ。これはその第1話です。日本やアメリカで流行らなかったのは、ひとえに絵が荒っぽいからではないかと思うのですが(格好良いなぁと思うときもあれば、もうすこし落ち着いて描いてくれないかと思うときもあり)、セリフをじっくり読んでみると、いやなかなか面白かったです。

 得体の知れないMoineやイギリス人のCorto、ロシア人のRaspoutine、日本からの脱走兵Taki Jap(タキ・ジャップ)等、祖国を捨てた男達の集うEscondida島は一種異様な世界。作者のHugo Prattはコンラッドやスチーブンソンの小説に影響を受けているそうなんですが、Escondida島で暮らす原住民達は小説「闇の奥」とは違って、参謀のCranio(クラニオ)や世話係のSbrindolin(スブリンドラン)を筆頭に明朗快活でしたたかさを持ち、西洋人から学んだ知識を吸収して密かに独立の時期を伺っています。そんな中、戦時下の大国の思惑に翻弄されるドイツ人将校Slütterや、この異様な世界の人々との交流を経て成長していくCaïnやPandora、これらのドラマを包み込む海と神秘的な交流を持つマオリ族の少年Tarao(タラオ)が語る物語等、この1冊には多くの魅力が込められています。
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 最初、パラッと全体を一瞥してみたところ「何か血の気の多い話だな」と思ったのですが、その大きな要因のひとつに、Corto Malteseが計4回、殺されかかっているというのが挙げられます。Corto Malteseという男は、やけに殺意を沸かされるキャラクターと言えると思います。でも、至近距離から弾丸を食らっても崖から突き落とされてもケガしただけでピンピンしているとは、非常にタフです。しかも、そういう相手と友情を交わす場面もあり、その懐の深さや楽天的なところは常軌を逸しているようにも思います。Cortoに限らず、描かれるキャラクターや出来事及び絵柄には、日本のマンガを読み慣れた身には常軌を逸した所が多々見受けられて面白く感じました。しかし、20世紀初頭を舞台として、国家や民族や人種やイデオロギーのぶつかり合いの混沌とした世界の中で様々な葛藤を経て交わされるセリフの数々には、心に染みるものがありました。エキゾチックな世界の中、漫画の娯楽的な要素と、シリアスかつシビアな題材とが混ざり合って、この作者独特の世界を構築しています。また、日本のマンガ用語で言うところの“キャラが立っている”ところにも惹き付けられました。
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 私はフランス語版(白黒版)を何年か前にAmazon.frで買ったのですが、A4サイズ163ページというボリュームの上にフランス語がびっしりと書かれているコマもあって、読みこなすのに難儀していた所、ネット古書店Abebooksで英語版(状態が悪かったので安く買えた掘り出し物)をゲットしたので、その助けを借りて読み終えました。英語版は長らく絶版になっていましたが、この度、何と、アメリカはHeavyMetal社より翻訳し直して刊行されるのだそうです(→詳細はこちらや、こちらなど)。判型が小さくなってしまうというのが残念なんですが、興味のある方はこの機会に是非ご一読を。まだAmazon.comにもAmazon.co.jpにも上がっていないんですが、入荷して欲しいものです。

 「Corto Maltese」は約20年間続いた長期シリーズなので多くのアルバムが刊行されていますが、最初にどれを読むかといえば、やっぱり、この第1話がおすすめです。シリーズ最後の方は絵が更に荒っぽくなってしまっているので、ページをにらめっこしながら辞書を引いている身には辛いものがあります。でも、どんな事が語られているかが非常に気になるので、セリフとかスラスラ読めるようになりたいものです。

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