2008年2月18日 (月)

mafaldaマファルダ

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「mafaldaマファルダ」(1)悪いのはだれだ!
作:キノ(Quino、1932-)
訳:泉 典子
(エレファントパブリッシング、2007年刊)

 当ブログ2005年11月23日付け記事でご紹介した、アルゼンチンの4コマ漫画「mafalda(マファルダ)」。翻訳本が出ていたので読んでみました。縦20センチ×横19センチの判型の各ページに3本の漫画を掲載し、全部で約170ページと、結構なボリュームです。最終ページによると、本書はアルゼンチン版の「mafalda 1」と「mafalda 2」を1冊にまとめたものだそうです。

 本書で描かれているのは、1960年代のアルゼンチンの子供達。主人公のマファルダは、嫌いな野菜スープを食べなきゃいけないといった身近な出来事から、国内の諸問題、更には世界中で起こっている様々な出来事にまで目を向けては疑問を抱き、憂えています。マファルダの発する疑問や抗議の数々を読んでいると、子供ならではの無邪気な目線からのものもあれば、大人が日頃口に出しては言わないことや言えないことを子供に仮託して言っているのではないかと思われるものがありました。マファルダの仲間達として、「何でも屋」の息子で拝金主義者のマノリト、夢想家の少年フェリペ、保守的なぶりっ子娘のスサニタ、デリケートな心を持つ男の子ミゲリトといった子供達が登場するのですが、本書冒頭の紹介文に書かれたこれらの設定を見ていると、もしかして大人社会の縮図なのか?と思ったものでした

 なので、絵だけ見て「ピーナッツ」のような可愛い漫画という先入観を持つと、かなり手強いです。いや「ピーナッツ」も十分に手強いとは思うのですが、「マファルダ」の方は、より生々しく社会情勢を反映しているような感じ。人名や地名といった固有名詞が沢山出て来ますし。日本の話題もありました。ちょうど東京オリンピックの頃だったからかな。

 という訳で、「この4コマ漫画は何を風刺しているのだろうか?題材となっている出来事は何?」と、頭をピキピキ言わせながら読んだものでした。人名や地名には欄外に注釈が付いていることもあるのですが、これだけではとてもじゃないけど足りません。「マファルダで読み解く戦後の世界情勢」などという解説書があっても良いくらいです。おそらく、ここに描かれた内容は、当時のアルゼンチンや翻訳が刊行された国々で、理解と共感を持って迎えられたことと思います。そして、あれから約40年。この漫画に親しんだ人々にとって、世界はどう変化しどう受け止められているのか、当時の疑問や憂いは今どうなったのか、それとも変わらないのか、気になるところです。

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 話はうってかわって、こちらはフランス語版マファルダの単行本第4巻(Glénat社刊)。やはりバンド・デシネの国だけあって、約A4サイズで46ページ(各ページ漫画4本ずつ掲載)、ハードカバーでフルカラーのアルバムとなっています。買ったまま積ん読していたのですが、この機会に引っ張り出して、ちくちくと辞書を引いてみました。やっぱり時事ネタが出て来て、頭をピキピキ言わせながら読みました。

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2007年12月30日 (日)

「漫画」をフランス語で何というか?

▼“La historieta en el mundo: La Bande Dessinée en Francia y Bélgica”
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 アルゼンチンのEducaRed ArgentinaというサイトのHistorietas(漫画)コーナーの中にある「El fascinante mundo de la historieta(漫画の魅惑的な世界)」というシリーズ連載。この中から、各国の「漫画」の呼び名とその語源を解説している漫画作品をご紹介する3回目(ちなみに第1回は→こちらで、第2回は→こちら)。今回は、フランス・ベルギーの「Bande Dessinée(バンド・デシネ)」について。「Bande Dessinée」は「描かれた(Dessinée)」「帯(Bande)」というのは当ブログでもおなじみではありますが、それに対応するスペイン語が「描かれた(Dibujada)」「帯(Tira)」で、この「tira(複数形はtiras)」という単語は、辞書によると「(新聞などの)続きこまマンガ」の意味もあるのだそうです。英語で言うところの「(コミック・)ストリップ」と同じですね。

 今回取り上げるリンク先の漫画のミソは、所々にバンド・デシネの有名作品のキャラクターが隠れているところ。とりあえず分かっているものを挙げていくと、1コマ目タイトルに巻き付いている尻尾が「Le marsupilami」で鉛筆立てに入っているのが「Astérix」「Les schtroumpfs」、2コマめの黒いベレー帽の男の子は「Benoit Brisefer」でBDを読んでいるのが「Boule et Bill」、4コマ目で新聞を読んでいるのが「Lucky Luke」、最後のコマで吹き出しの下に隠れているのが「Spirou et Fantasio」に「Tintin」。…分からないものもありますが、判明したら書き足します。では、例によって拙訳は以下の通りです(今回のはこれまでにも増して訳しづらくて自信なし…)。

--何故Bande Dessinéeなのか?--
(原案:B.D.、シナリオ:FABIO BLANCO、作画:ADRIAN MONTINI)
(1)「こんにちは、僕はダヴィーヌ。僕は今描き終えられようとしているけど、これがフランス語でバンド・デシネと呼ばれているもので、描かれた(←Dibujada)帯(←Tira)を意味しているんだ。フランスやベルギーでは、漫画のことをこんな風に呼ぶんだ。」(2)「しかしながら、バンド・デシネは“新聞漫画(←tiras)”として読まれるのではなく、44~64ページのアルバムの形で読まれる…図書館で読んだり保管するのにおあつらえむきなんだ。これらの漫画のいくつかは、前もって漫画雑誌にエピソードが掲載されるのが常だったんだ。」(3)「そのような漫画雑誌は皆―とりわけPilot、Tintin、A Suivre、Pif―、ユーモアとアドベンチャーの正真正銘の“宝庫”となったのだけど、残ったのはSpirouだけだった。」(4)「幸い出版社は、描き下ろしの漫画や、或いは“総合誌”や新聞に掲載された漫画を使って、アルバムを刊行し続けた。」「ハハハ、このObélix(オベリクス)はとても笑わせるね!」(5)「フランスやベルギーの漫画のキャラクターはいろんな形で世界中に知られているし、MANGAやアメリカンコミックと“全力で”張り合っている。」「既にご存知のようにね。“Bande Dessinée”或いは“B.D.”と読んで下さいね!」「もし親しみを込めるなら“BéDé”とね!」

<2008年4月12日、19日追記>
主人公のDavine(ダヴィーヌ)さん、パッと見性別が分かりにくかったのですが、実は女性で、モデルはベルギーのBD作家で、また『Spirou』の初代作者Rob Velの奥さんなのですね。(→仏語版wikipedia)この漫画、なにげに中身が濃いです。訳文はそのうち直します…。

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2007年11月17日 (土)

「漫画」をイタリア語で何というか?そして他の国では?

▼“La Historieta en el mundo: El Fumetto italiano”
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 前回の記事では、「漫画」のスペイン語訳とその語源について、アルゼンチンのEducaRed ArgentinaというサイトのHistorietas(漫画)コーナーの中にある「El fascinante mundo de la historieta(漫画の魅惑的な世界)」というシリーズ連載を元にご紹介しました。今回は引き続き、漫画のイタリア語訳について、ご紹介します。

 「漫画」をイタリア語では「fumetto(フメット)」、複数形なら「fumetti(フメッティ)」と言い、その語源は、日本では「吹き出し」と呼ばれる雲のような形をしたものが「fumo(湯気、煙)」みたいだからだそうです。


 では、前回同様、上記画像の漫画を翻訳してみましたので以下に記します。

--何故fumettiなのか?--
(このシリーズの原案:BANDA DIBUJADA、シナリオと作画:BRUNO OLIVIERI)
(1)「やあ、僕の名前はブルーノ。イタリアに住んで、仕事しているんだ。」「そして、僕は漫画の作画家なんだよ!」(2)「ところで…僕の国では漫画の事を何故“fumetti”って呼ぶのか知ってますか?」(3)「何故なら、その名前は、様々な登場人物から発せられた言葉の入った“雲”に由来するからなんだ。」(4)「それらは英語だと“BALLOONS(球、気球)”と呼んでいて、小さな“FUMO(煙)”の雲みたいなものだ。まさに“fumetti”!!」(5)「アメリカンインディアンもまた、お互いに連絡し合うのに“煙の雲”を使っていた。僕がやっているようにね!!」「ねぇねぇねぇ、僕もまたちょっとしたインディアンの気分さ。」「ああっ!」「話は変わって、これは“ONOMATOPEYA(オノマトペ)”と言うんだ。その名前は、ギリシャ語の“ONOMA(名前)”と“POIEO(私は振る舞う、行動する)”に 由来するんだよ。」「でも、これはまた別の話だね!」「終」

 そして、この漫画に付けられた解説文には、各国の「漫画」の呼び名が載っていて興味深かったので、その部分を以下に翻訳してみます。

 漫画は、世界中の様々な場所で色々な名前を持っています。英語が話される国では“Comic(コミック)”、スペイン語(カスティーリャ語)では“Historieta(イストリエタ)”という言葉が生まれ、“Bande Dessineé(バンド・デシネ)”はフランス、“Manga(マンガ)”は日本、“Quadrinhos(クアドリノス?)”はブラジル、“Tebeos(テベオス)”はスペイン、“Comiquitas(コミキータス)”はいくつかの中米とメキシコで、“Tirillas(ティリージャス)”はプエルトリコで、“Muñequitos(ムニェキートス)”はキューバ、等々。
 イタリアではそれは“Fumetto(フメット)”と呼ばれ、複数形は“Fumetti(フメッティ)”です。
 活動団体Banda Dibujada(バンダ・ディブハーダ)は、世界中の漫画家に対して、各々の国ではそういった種類のものを“何て”“何故”呼ぶのかを語って貰おうという目的を持って、コンタクトをとり始めました。
 この「Banda Dibujada」とは、アルゼンチンで生まれた文化活動団体で、子供のための漫画の創作・出版・普及を支援するものだそうです(参考→こちら)。いつか、このシリーズに日本の「マンガ」の語源に関する漫画や解説も載る日が来るのでしょうか。

(12月4日、訳文をちょこっと修正しました。スペイン語の『humo(煙、湯気)』と『nubes(雲の複数形)』を混同している部分があったので。)

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2007年11月13日 (火)

「漫画」をスペイン語で何と言うか?

▼¿Por qué el nombre “Historieta”?”
(何故“Historieta”という名前なのか?)
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▼“La historieta en el mundo: El tebeo español”
(世界の漫画:スペインのtebeo)
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 「漫画」をスペイン語で何というか?以前、当ブログ2005年10月31日付け記事で手持ちの西和中辞典に載ってた「historieta(イストリエタ)」と「tebeo(テベオ)」の2つの単語の定義を引用しましたが、その後スペイン語の漫画関連サイトをあちこち眺めていると、「tebeo」の名前を冠していても紹介されている作品は大人っぽいものがある…。「historieta」と「tebeo」の使い分けは内容よりもむしろ、場所(ラテンアメリカとスペイン)なんじゃないか…。そんなことを思っていた矢先、その疑問を解決する日がやって参りました。EducaRed ArgentinaというサイトのHistorietas(漫画)コーナーの中に「El fascinante mundo de la historieta(漫画の魅惑的な世界)」というシリーズ連載があって、そこで「historieta」と「tebeo」について、それぞれのネーミングの由来を漫画で解説してありました。(「Virus Mental*」2007年9月26日付け記事で知りました。)

 要約しますと、「historieta(複数形はhistorietas)」は「historia(歴史、物語の意)」の縮小語、「tebeo(複数形はtebeos)」の由来はスペインのかつての人気漫画雑誌「TBO(テベオ)」。「TBO」の語源は「Te veo.(テ・ベオ、私は君を見ている)」なのですが、これを略して「TVO」と表記すると「テウベオ」と読まれてしまうから「TBO」と表記されたのだそうです。因みに、スペイン語のアルファベットでは、「B」は「ベ」、「V」は「ウベ」と読みます。英語と違い、どちらも「バ行」音で発音します。(参考文献:『はじめてのスペイン語』東谷穎人著、講談社新書)


 これだけでは簡潔過ぎますので、上でご紹介した2本漫画を翻訳してみました。ところどころ言葉を補ったり意訳したりしていますが、間違いがありましたらごめんなさい。やはり翻訳って難しいですね…。

--何故“Historieta”という名前なのか?--
(原案:B.D.、シナリオ:FABIO BLANCO、、作画:CACHO MANDRAFINA)
(1)手紙「拝啓、ホームズ様:何故Historietaという単語なのか、調査して頂きたいのですが」ホームズ「うーむ…これはベーカー街にしては異例の事件だな。」(2)イエロー・キッド「絵を連続させてひとつの物語を構成する、あまり重要とされない、簡略化した物語」ホームズ「おお、アイルランドの子供は辞書の定義を持ってきたか。」(3)リトル・ニモ「夢の世界では、はじめてのHistorietaは新聞の小さなスペースに登場したって言ってたよ、ボス。」ホームズ「考慮に入れとくよ、おやすみ。」(4)バスター・ブラウン「決定!」紙「Historia(歴史、物語の意)の縮小語。Historieta達はちっぽけな割り当ての中、新聞等の出版物のおかげで進化した。簡略化した続きコマ漫画は、やがてコミックブックやグラフィックノベルを育てた。教訓:Historietaは粗悪な意味の単語ではない。何故なら、大きな物語は沢山のより小さな物語で作られるから。」(5)君の決定を受け入れよう、バスター。しかし…君の犬を呼んでくれ…吠えないということは、噛み付くと推測するが…」(6)ワトソン「初歩(elemental)ですかな、ホームズ?」ホームズ「歯牙(dental)だよ、ワトソン君。」
--何故“TEBEO”なのか?--
(シリーズ原案:BANDA DIBUJADA、シナリオ・作画:JAN)
(1)作者「やあ…いや、私はTEBEOは描いてないよ。PAJARITA(パハリタ)を作っているだけさ…(注!…日本では"ORIGAMI"という。)」(2)さて行くか、着替えたよ…こんな風に。これで私はTEBEOの登場人物だ!」(3)「TEBEOは"TE VEO(私は君を見ている)"から来ているんだ。とはいえ、"V"の文字はこの場合"B(長いB)"と表記しているんだ。でないと"TEUVEO"になっちゃって(注!…スペインでは"UV"のことを"短いV"と言う)、うまくくっつかないんだ」(4)ナレーション「スペインで最も古い漫画雑誌のひとつが1917年に生まれ、TBOのロゴを冠しており、"TEBEO"という発音で読まれた。」作者「カフェオレ一杯とTEBEO一冊…」(5)作者「TBOという漫画雑誌は、我々の祖父母・両親・おじさんおばさんの時代にはとてもポピュラーだった。そして、その登場人物は当時の社会を反映していた。"LA FAMILIA ULISES(ユリセス一家)"なんかはずっと、最も親しまれたものだった…」窓口「どうぞ」(6)ナレーション「ちがう、TB0って言ったんじゃないよ、TEBEOって言ったんだ」窓口「?」(7)「現在、cómicsと言う方が多いだろうか…おそらく、よりモダンな響きがするからだろうか、しかし、どんな言葉がより格好いい言葉として残るだろうか?」作者「SUPERLÓPEZのTEBEO一冊。」窓口「えっと…これ?」

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2007年10月28日 (日)

アルゼンチンのアニメ映画「Fierro」

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(参照元:EL BLOGAZO DEL COMIC: FIERRO LA PELICULA EN FASCICULOS)

 当ブログ2005年11月23日付け記事でご紹介した、アルゼンチンの漫画家Roberto Fontanarrosa(ロベルト・フォンタナロサ、1944-2007、公式サイト)。残念なことに今年7月19日に亡くなられたのですが、そのFontanarrosaの絵をもとにしたアニメ映画「Fierro(フィエロ)」が、11月に公開されるそうです。

 youtubeに予告編がupされていました。
●Fierro Trailer
●Fierro Teaser
●Fierro Trailer Final

 このアニメ映画は、José Hernández(ホセ・エルナンデス、1834-86)の叙事詩「Martín Fierro(マルティン・フィエロ)」を翻案したもの。映画の公開に先駆けて、Clarín社ではFontanarrosaのイラスト付きの冊子を順次刊行していくそうです。

 「Martín Fierro」について検索してみたところ、邦訳は絶版の模様ですが、いくつか参考になるサイトがありましたので、まずはそこから少しずつ読んでいこうと思います。

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2007年8月 2日 (木)

ERNIE PIKE

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ERNIE PIKE(アーニー・パイク、Glénat社、1999年刊)
シナリオ:Héctor Germán Oesterheld(エクトル・ヘルマン・オエステレルド、1919-1977)
作画:Hugo Pratt(ユーゴ・プラット、1927-1995)
初出:「Hora Cero Mensual(月刊オラ・セロ)」1957年5月第1号、他

 米軍の従軍記者Ernie Pike(アーニー・パイク)による戦場レポートという体裁を取った、戦記ものの短編作品集。前回のエントリで取り上げた「El Eternauta(エル・エテルナウタ)」のHéctor Germán Oesterheldと、2006年12月4日付けエントリで取り上げた「Corto Maltese(コルト・マルテーズ)」のHugo Prattによる、1950年代のアルゼンチンの漫画がフランス語圏で刊行されたもので、5頁~25頁の様々な作品が23篇収められています。私が持っているのは、以前Glénat社刊行された全1巻の白黒バージョンですが、現在はCasterman社から彩色されたリニューアル版が4冊に分けて刊行されています(→こちら。リニューアル版には新たに収録された話もあるようですね。)。

 Ernie Pikeは架空の人物で、沖縄で戦死した従軍記者アーニー・パイルがモデル。舞台は第二次大戦のヨーロッパやアジアやアフリカ、更には朝鮮戦争へと広範囲に渡り、様々な人間ドラマが展開されています。戦争という極限状況のもとで描かれる、最前線の出来事の数々。或る者は敵を助けるために命を落とし、また或る者は何とか生き抜こうとする。状況に翻弄される者もいれば、何よりも自己の信念を貫こうとする者もいる。そこに描かれるのは、イデオロギーや勇ましさとは無縁の世界です。これらの作品はおそらくフィクションであり、もしかしたら史実を題材としているものもあるかも知れませんが、その辺りは私にはわかりませんでした。

 どの作品も短いページ数(主に5~9頁)の中で、込み入った世界をコンパクトに上手くまとめてあります。様々な国の兵士や民間人を描くにあたって少々ステロタイプな描き方をしている所が気になりましたが、なんと言っても50年も前の作品ですし、その辺は割り引いて見た方が良いかも知れません。しかし、核となるのは普遍的な人間ドラマであり、それはどの時代であっても共感を呼ぶものではないかと思いました。

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2007年6月 5日 (火)

El Eternauta

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El Eternauta(エル・エテルナウタ、Record社、1998年刊)
シナリオ:Héctor Germán Oesterheld(エクトル・ヘルマン・オエステレルド、1919-1977)
作画:Francisco Solano López(フランシスコ・ソラノ・ロペス、1928-)
表紙:Juan Bobillo(フアン・ボビージョ、1975-)
初出:「Hora Cero(オラ・セロ)」1957年9月4日号-1959年11月18日号
(初出のデータは、こちらのページを参考にしました。)

《あらすじ》
 真夜中に書斎にこもって執筆中の漫画シナリオライターの前に、突如現れた見知らぬ男。男は名前をJuan Salvo(フアン・サルボ)といい、シナリオライターに自分の身に起こった恐ろしい出来事の数々を話し出した。もともと妻や娘と一軒家で平穏に暮らしていた彼が友人達と屋根裏部屋でカードゲームに興じていたある夜、突然降ってきた「死の雪」。通称「ellos(彼ら)」と呼ばれる宇宙人の襲来。レジスタンスの結成。数々の戦い。そして……

《感想など》
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 この作品はアルゼンチンの50年前の漫画で、今も様々な執筆者によって描き継がれています。当時の掲載誌である「Hora Cero(ゼロ・アワーの意)」とは、1957年~59年に作者Oesterheldが刊行した週刊漫画雑誌(こちらのページが参考になりました)。タイトルの「Eternauta」というのは恐らく作者の造語で、語源は「永遠の(eterno)+航海士(nauta)」といった意味なのではないかと思います。主人公の潜水服のような服装は「死の雪」を防ぐための防塵スーツ。アルゼンチンの漫画情報サイトには、しばしばこの防塵スーツ姿の主人公のカットが載せられていますし、後年のいくつかの漫画作品にも登場している模様です(→こちら)。Juan Salvoは、アルゼンチンの漫画の一種のアイコンと言えるのではないかと思います。
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 ストーリーは、今のところ私自身かいつまんで読んでいる状態なのであまり正確なところは言いにくいのですが、宇宙人襲来ということで、やはりH.G.ウエルズの小説「宇宙戦争」や数々の映画の影響があるのかなという気がしました。濃ゆい絵で荒唐無稽な所のあるおっかないストーリーなんですが、足かけ3年に渡る週刊漫画連載ということで、読者を引きつけたであろう数々のエピソードや、おっかないけどどことなくユーモラスにも思える宇宙人「mano(スペイン語で“手”の意味。やけに手の指の数が多いのでこの名が付いたと思われる)」のデザインなど、娯楽作として楽しく読めました。ただし、深読みすると当時のアルゼンチンをとりまく世相が反映されているであろうことや、その後の歴史的経緯を考えると、私には作中人物であり作者であるOesterheld自身が「Eternauta」となってしまったように思えて恐怖も感じました。


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 今年は「El Eternauta」の初掲載から50年で、かつOesterheldがいなくなって30年の節目にあたる年で、ブエノスアイレスでは「MUESTRA 50/30」というイベントが開かれるそうです。(『MUESTRA』とは辞書によると『サンプル』とか『展示会』の意味)。当時の作品の原画や出版物等の展示の他に2つの企画が予定されており、一つは審査員が選出した新しい才能を持った漫画家5人の作品を紹介するもので、もう一つはその他の様々な世代の漫画家による架空の「Hora Cero」の表紙を展示するというもの。Solano López画の「El Eternauta」の単行本も、続編ともども復刊されたそうですし(私が持っているのは、数年前にネットで購入した旧バージョン)、これまであまり触れられることのなかったアルゼンチンの漫画の世界を知る機会が増えるのは非常に喜ばしいことだと思いました。

《関連サイト》
●El Sitio web de la gran historieta argentina: El Eternauta
●PORTALCOMIC - Portalcosas - Continum4(目次)
●PORTALCOMIC - Portalcosas - Continum4(序文)
●MUNDO D: El Sr. D en la muestra 50/30


(8月20日、加筆修正)

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2006年12月17日 (日)

Sgt. Kirk(Sargento Kirk)

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 前々回のエントリで取り上げた「Corto Maltese:La ballade de la mer salée」の初出誌「Sgt. Kirk」について。この雑誌は1967年から70年代にかけて発行されたものですが、今でもイタリアのebayでよく見かけます。誌名「Sgt. Kirk」のもととなったのは、Hugo Prattが在アルゼンチン時代の1950年代に描いた西部劇「Sargento Kirk(カーク軍曹)」です。シナリオはHéctor Germán Oesterheld(1919-1977)。スペインのebayでは、ときどき掲載誌「Hora Cero(ゼロ・アワーの意)」を見かけます。

 アルゼンチンの漫画情報サイト「HISTORIETECA」内の「Biografía de Oesterheld」によると、「Sargento Kirk」の初登場は雑誌「Misterix」1953年、225号。その後、様々な雑誌媒体で長期にわたって連載された人気作品だったそうです。
 Kirk軍曹はもともとは米国の第七騎兵隊の兵士。だけどインディアンの虐殺の現場に嫌気がさして脱走し、インディアンを支援する。1950年代当時の西部劇の約束事とは異なった視点とリアリズムを伴った、革新的な作品だったそうです。

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 でもこの作品、読みたくても現在では入手が困難です。以前、amazon.co.jpで買ったのは小説版でした。漫画版の方はイタリアでもフランスでも絶版状態、最近アルゼンチンで抜粋の廉価版が出た模様ですが、ネット通販サイトで売っているところが見つからないんですよね…

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 BD情報誌「BANG!(2005年、第3号)」のCorto Maltese特集によると、CongSA(Hugo Prattの遺産を管理している会社)で復刊の取り組みはしているそうです。ページ数が膨大でフォーマットが不揃いなために困難だという意見もあるようですが、せめて、過去にLes Humanoïdes Associés社から出ていたもののリプリントを出して欲しい…

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 また、BD情報誌「Bodöi hors série(Bodöi増刊、2002年、第5号)」のHugo Pratt特集には「Sgt. Kirk」誌の発行人であるFlorenzo Ivaldi氏のインタビューが載っていて、当時に関する本を執筆中とのことでした。刊行のあかつきには表紙画像の再録を是非お願いしたいところです。

 Hugo Prattの水彩画は魅力的なものが多いので、たとえ本体が手に入らなくても画像が見たくて、これまでいろんな国の通販サイトやファンサイトをのぞいていました。が、最近になって、最強のHugo Prattファンサイトが誕生しました。アルバムや掲載誌等の画像、リンク集等盛りだくさんです。興味を持たれた方は要チェックですよ!→「Les archives Hugo Pratt」

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2006年6月 6日 (火)

Camouflage Comics: Dirty WarImages

▼Camouflage Comics: Dirty War Images
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 1976-83年のアルゼンチンの軍事独裁政権下の漫画への検閲や人権弾圧、種々の社会的・文化的状況を扱ったサイト(要flash)。主に漫画に焦点を当てています。23編の漫画(エッセイ付き)、7編の論文(pdfファイル)、ブログ等で構成されています。論文は英語とスペイン語で書かれ、漫画の吹き出しは主にスペイン語で書かれています(マウスポインタを当てると英語訳が表示されます)。

 このサイトは、こちらのBDフォーラムの記事によると、2005年5月29日、オランダの美術アカデミー(ABK、the Academy of Fine Arts)にて立ち上げられたとのこと。ベルギー出身のAarnoud Rommens氏、クロアチア出身のIngrid Stojnic氏によって、マーストリヒトのJan van Eyck Academyにてプロジェクトが進められたそうです。

 「Dirty War(汚れた戦争)」とは、墨塗り文章の冒頭をまとめるとこんな感じ。
……「Dirty War」とは軍事独裁政権による反体制派への計画的な弾圧であり、その手段は失踪・拷問・殺人・その他、人目につかない大規模な人権侵害の手段を用いている。このような戦争は大抵の場合秘密のサポートをアメリカ合衆国政府から受けて、1960-80年代にいくつかのラテンアメリカ諸国で遂行された。この言葉は、とりわけ1976-83年のアルゼンチンの軍事独裁政権による反体制派の粛正を指しており、この時代に10,000~30,000人のアルゼンチン人が殺されるか“消える”かした。
……こうして文章に起こしていると、つらくて気が重くなる内容です。一個だけ、何となく気が引けて日本語にするのをためらった単語があります。良かったら探してみて下さい。

 そして「Camouflage Comics(カムフラージュ・コミックス)」とは、このサイトの為に新しく作られた用語です。「DETAILS」欄や「CONTEXT」欄にサイト制作者の意図が書かれています。要約するのが難しいのですが、アルゼンチンにおける「Dirty War」の遺物や当時の記憶、そして今もなお残る後遺症等を、現在のビジュアルと言語を用いて表現しようとする取り組み、と解釈しました。

 このサイトのメインコンテンツは2つ。ひとつはトップページの墨塗り部分をクリックすると表示される漫画で、もうひとつはサイドの写真部分をクリックすると表示される論文です。漫画の方は2002-05年に製作された新しい作品群であり、論文の方は軍事独裁政権下の漫画に関する話を中心に、文化と社会の諸状況について書かれています。それぞれアルゼンチンの現在と過去を表しているのですが、この2つは決して分断されるものではなく、古いものから照らし出される現在、現在の中にまとわりつく過去が見えてくるとのことでした。

 漫画・文章ともにかなりのボリュームなので、なかなか全てを読み通しきれずにいるのですが、過去の出来事を知り現在のイメージに接することで、決して遠い国の出来事と切り離すことの出来ない何かを感じ取りたい、と思いました。アルゼンチンの軍事独裁政権下の漫画に関する出来事で何といっても悲しいのは、シナリオライターのHector German Oesterheld氏の話。ゲリラ組織「Montoneros」に参加して、4人の娘と共に身柄を拘束されて消息不明となったそうです(論文『The Impossible Biography』で取り上げられています)。そのような悲劇的な出来事を経た現在、このサイトに挙げられた種々の漫画は全体的に重苦しい雰囲気が立ち込めていますが、どの作品も凝った画面作りをしていました。いっぺんに沢山見ようとすると、どうしても重たくてつらい気持ちになってしまうので、少しずつ見ていきたいと思います。

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2005年11月23日 (水)

愛知万博で遭遇したアルゼンチンの漫画2つ

 ずいぶん前のことですが、愛・地球博(愛知万博)のアルゼンチン館で、アルゼンチンの文化・芸術を紹介したビデオを上映していました。タンゴダンサーやミュージシャン、映画等の映像が流れる中、以下の2つの漫画の画像が映し出されました。

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 この2つが、アルゼンチンのポピュラーな漫画だということなのでしょうか。という訳で、分かる範囲で調べてみて、関連リンクなどを挙げてみました。

●上図:「Mafalda」(作者:Quino)
…日本でもよく知られている作品。でも、日本語訳・英語訳は出ていない模様です。Mafaldaという名の女の子と、その家族や友達が織りなす数々のストーリー。ユーモラスなものもあれば、中には深刻な話もあるかも知れません。とりあえず分かったのは、Mafaldaという子は、口が達者でスープが嫌いで、地球儀(及び地球)を大事にしている、ということ。このキャラクターは1963年に家庭用電気器具の新製品のキャンペーン用に創られたものの採用されず、翌1964年から漫画の連載が始まり、掲載紙を変えながら1973年まで続いたそうです。
Quino(公式サイト)
Los Videos de Mafalda(ショートアニメを見ることができます)
(画面下のキャラクターをクリックすると、更に多くのビデオのリストが)
Quino, Official Page(公式サイト英語ページ)
Tiras cómicas de Mafalda(作品紹介)
(ページの一番下の『VER MAS HISTORIETAS』をクリックすると、更に多くの漫画が)
Comic creator: Quino (Joaquin Salvador Lavado)(Lambiekによる紹介(英語))

●下図:「Inodoro Pereyra」(作者:Roberto Fontanarrosa)
…こちらは、日本語の情報が全然見あたらない上に、英語の情報も乏しかったので、いまいちよく分かりませんでした。Inodoro Pereyraという名の、ガウチョ(辞書によると『インディオの子孫で、通例スペイン人との混血.ラプラタ川流域のpampaに住む』とのこと)を模したキャラクターと犬のMendieta、彼女のEulogiaが主な登場人物。公式サイトの中に「Inodoro Pereyra, el renegau, es tan argentino como el dulce de leche, la birome o el colectivo. 」という文章があるのですが、これを直訳すると「Inodoro Pereyra、変節漢、それはミルクキャンディー、ボールペン、或いは乗り合い場バスと同じくらいアルゼンチン的である」と、果たしてこんな訳で合っているのかどうか、また、これらの語句のたとえが意味するものは何か、うーん、私にはさっぱり分かりませんでした。逆に、こういうのが分かるとアルゼンチンのことを理解しているということになるのでしょう。この漫画は1972年に連載が始まり、今も新作が刊行されている模様です。
La web de Fontarrosa(公式サイト)
Tiras cómicas de Inodoro Pereyra(作品紹介)
Comic creator: Roberto Fontanarrosa(Lambiekによる紹介(英語))

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2005年11月22日 (火)

アルゼンチンのWEB漫画情報誌

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Sonaste Maneco



 アルゼンチンの出版社「La Bañadera del Cómic」よりpdfファイルで提供されているWEBマガジン。季刊でちゃくちゃくと刊行されて、今回で6号め。それぞれの表紙をクリックすると、圧縮ファイル(zip形式)がダウンロードされます。大して圧縮されないのにzip化しているのは、検索よけでしょうか。


 内容はというと、アルゼンチンに限らず世界中の漫画の話題を扱っています。スペイン語で書かれているのでなかなか読めないのですが、画像を見るだけでも十分楽しめます。


 今号の特集は、アルゼンチンはマルデルプラタで11月4日-5日に開催された米州サミットを受けての、ラテンアメリカの漫画家特集。当ブログ10月31日付け記事で取り上げたキューバの漫画についても、「Elpidio Valdés」「Vampiros」といった作品に多くのページを割いていました。この2作品はアニメ化もされているようで、いつか是非見てみたいです。


 その他、ビートルズのアニメ特集や、新刊や映画化の話題、古い作品の紹介等々、盛りだくさんの内容でした。毎号120-130ページ、容量にして7~8メガバイトのボリュームで、いやもう、世界には沢山の国々と沢山の漫画があるのだということを痛感させられます。



 以前、こちらでも軽く触れたように、アルゼンチンは実はかなりの漫画大国。もしかしたら、現地では日本やアメリカのものに押されているかもしれませんが、ネットでは多くの作品が紹介されています。日本で知られているアルゼンチンの漫画といえば、キャラクターグッズも発売されている「MAFALDA(マファルダ、作:Quino)」と、日本・カナダ合作でアニメ化された「CYBERSIX(サイバーシックス、シナリオ:Carlos Trillo、画:Carlos Meglia)」の2つでしょうか。「Sonaste Maneco」では、前者のファンなら2号にQuino氏の特集記事が、後者のファンなら4号と今号にCarlos Meglia氏のフランスでの新作「Canari(シナリオ:Crisse)」の紹介が載っていたので、チェックしてみる価値はあるかと思います。…と、思いきや、現在1号と2号はサーバーの容量不足でファイルをupできないとのこと。今後サーバーを増強する予定は無いのかな…

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