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2009年7月 4日 (土)

ユリイカ・メビウス特集号

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ユリイカ2009年7月号(通巻568号)
特集 * メビウスと日本マンガ

 当ブログ4月26日付け記事でご紹介した来日シンポジウムの模様や、識者による論文やコメント、詳細な作品紹介と、メビウスに関する情報がギッシリ詰まった一冊。

 5月の来日シンポジウムといえば、明治大学のに拝聴しに行ったものでした。メビウス氏の談話においては、ところどころで二つの要素を挙げて解説するのが印象的でした。曰く、「ブルーベリー」という西部劇というジャンルを何故選択したのかという問いに対して、第二次世界大戦後のフランスにアメリカの文化が流入したことと、逆にヨーロッパ人がアメリカを開拓したという二つの歴史的な関係、また、新しい思想が古い世界を征服する、或いは逆に近代に対して伝統側から抵抗が生じるという二つの側面。曰く、子どもの頃に接した、子ども向けのBDと、大人向けのイラストレーションという二つの世界。曰く、BDの世界の中の、従来からの子ども向けBDと、新たに起こりつつあったハイティーンや大人向けの表現。曰く、自分自身の表現と、市場や編集者からの要求。自分自身を表現することの喜びと恐れ。……等々。

 思えば、それらはペンネームの由来の「メビウスの輪」の両面のような、また、京都精華大学でのシンポジウムで出て来た、一枚絵としての絵画とBDとの違いをどのように意識しているのかの問いに対する答えとして言われた「一本の棒の両端のようなもの」なのかも知れません。ジャン・ジロー名義の作風とメビウス名義の作風もまた然りで、時に異なっているように見えても、その二つはどこかでつながり、一人のBD作家を形作っているのだと思いました。

 ところで、今回の一連のイベントの予告をネットで見かけたとき、京都精華大学 学長室ブログ4月15日付け記事には、企画展のタイトルが「Moebius au pays du Manga」と書いてありましたし、明治大学のシンポジウムのパネラーはユリイカのマンガ批評特集号でよく見かける顔ぶれだし、あくまでも主役は日本のマンガなのかなと思ったものでした。でも、日本のマンガの、とりわけ80年代の重要な作品のいくつかには確かにメビウス氏の画風の影響がありましたし、シンポジウムやインタビューでメビウス氏の語る言葉のひとつひとつには表現者にとって普遍的なものがありました。今後、日本のマンガが発展していく上で、また、外国と交流していく上で、この一連のイベントが良いきっかけとなれば良いなと思いましたし、また、本誌の豊富な記事や論文は充分にそれを補うものだと思いました。

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