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2009年1月19日 (月)

笑い牛

 明けまして2009年は丑年。という訳で、牛ネタでお送りいたしますよ。

belcube.jpg

 近所のスーパーで売っている、サイコロ型のフランス産チーズ「ベルキューブ」。赤い牛の笑顔がトレードマーク。「La vache qui rit(ラ・ヴァシュ・キ・リ、笑う牛)」と呼ばれるこの牛の由来は、以下の公式サイトに載っています。

●La Vache qui rit(日本版公式サイト)

●Fromage La vache qui rit pour enfants et adultes(仏版公式サイト)


 1921年4月16にLéon Bel(レオン・ベル)により商標登録された「La vache qui rit」(→こちら)。1923年に製作されたポスターには、現在のデザインにつながる、チーズパッケージのイヤリングをした赤い牛のイラストが描かれ、多くの販促グッズが生まれたそうです(→こちら)。


 公式サイト以外で参考になったものを、以下に列挙します。

●Les Arts Décoratifs - Site officiel - La vache qui rit

(La Vache qui rit のイラストの誕生と変遷が年表形式で解説されています)

●Benjamin Rabier

(初代La Vache qui ritと、同じ画家による亜種について紹介されています)

●世界一愛されている牛

(日本語による解説。プロトタイプである『ラ・ヴァシュキリ La Wachkyrie』の話が興味深いです)



 さて、このイラストを描いたのは、Benjamin Rabier(バンジャマン・ラビエ、英語読みだとベンジャミン・ラビエ、1864~1939)。「La vache qui rit」のイラストみならず、様々な漫画を描き、中には今でもアルバム(単行本)が売られているものもあります。以前は遺族による公式サイトがあったのですが、現在では残念ながら消滅している模様。でも、web.archive.orgに記事といくばくかの画像が残っていて、色々と参考になりました(→こちら)。


▼Benjamin Rabier - Accueil(web.archive.orgより、08年2月13日のtopページ)

benjamin_rabier_officiel_old.jpg

 一部画像が欠けてしまっているのが惜しい。画面右下のアヒルが、いちばんの代表作である「Gédéon le Canard(あひるのジェデオン)」。現在も販売されているアルバム一覧はこんな感じ(通販サイト.chapitre.comより)。しかも、1976年にMichel Ocelot(ミッシェル・オスロ、日本では『キリクと魔女』等で知られている方)監督でTVアニメ化されていて、opがカナダの動画配信サイトTagTéléにupされていて、こんな感じ。また、他の作品は、通販サイトBdnet.com(→こちら)やBD情報サイトBedetheque(→こちら)に表紙やサンプル画像が載っていました。「Fables de La Fontaine(ラ・フォンテーヌの寓話)」「Flambeau. Chien De Guerre(軍用犬フランボー)」「Le Roman du Renard(狐物語)」「Les Contes du Lapin Vert(緑の兎の話)」等、オリジナル作品も翻案も、いずれも動物たちが生き生きと描かれていて、見る者の気持ちを楽しくさせてくれます。


 これらの作品は20世紀初頭に描かれたもので、当ブログ2005年8月21日付け記事で触れた通り、当時のフランスの漫画(バンド・デシネ)は、セリフは“吹き出し”の中に書かれず、絵の下に描かれていたと言われ、確かに上に挙げたBenjamin Rabierの諸作品もまた、そんな感じでした。しかし、ここでひとつ新たな発見が。web.archive.orgに残されたBenjamin Rabier公式サイトには「Benjamin Rabier et la bande dessinée」というページがあり、Rodolphe Töpffer(ロドルフ・テプフェール)および、19世紀末~20世紀初頭のバンド・デシネの作品や雑誌について解説しているのですが、「On voit apparaître les toutes première bulles dans les "Pieds Nickelés" (première parution dans "L'Epatant" en 1908), 」などという記述が。えっ、フランスで漫画に吹き出しを初めて使ったのは「Zig et Puce(ジグとピュス)」じゃぁなかったのか?と、調べてみると、BD情報サイトBDoubliees.comの中に「Pieds Nickelés(ピエ・ニクレ)」の紹介ページ(→こちら)と、第1回の画像(→こちら)を発見。確かに、わずかながら吹き出しがありました。でも、メインの会話とナレーションはコマの外にあるから、BDの歴史の中で勘定に入れていないということなのでしょうか。


 そもそも私が「La vache qui rit」およびBenjamin Rabierのことを知ったのは、当ブログ2005年8月20日付け記事と先述の8月21日付け記事でご紹介した『Zig et Puce, tome 1 : 1925-1928(作:Alain Saint-Ogan、アラン・サン=トガン)』の巻頭文(Michel Gregミッシェル・グレッグによる)に「Alain Saint-Oganが後に«La vache qui rit»を描くBenjamin Rabierを尊敬していた」という記述があったからでした。更に、オランダの漫画書店lambiek.netによるBenjamin Rabierの紹介記事(→こちら)によると、 日本でもおなじみの「Tintin(タンタン、作:Hergéエルジェ)」のネーミングの由来は、Benjamin Rabierの「Tintin Lutin」という作品なのだとか。


 まさか、近所のスーパーで売っていたチーズから、ここまでBDの歴史をたどっていくとは思いもよりませんでした。バンド・デシネは実に奥が深いですね。そういえば、かねてから読んでいた「線が顔になるとき―バンドデシネとグラフィックアート (著:ティエリ・ グルンステン、訳:古永真一、人文書院刊)」という本(余談ですが、この本の学術的な文章が正直なところ、恥ずかしながら非・学術的な私にはとっつきにくいのですが、様々な情報を拾いながら読んでいくと実に面白いものです。その辺をとっかかりに、少しづつ読み解いていければ、と思っています)の141頁に「笑い牛」のテレビコマーシャルのセリフが載っていました。おそらく本国では、この赤い牛の笑顔が日常生活の中にとても馴染んでいるのでしょうね。仏版公式サイトには日本では売っていない製品やグッズが沢山載っていました。グッズの中には日本ゆかりの品も(→こちら→こちら)。レシピも充実していて、このペンギンさんのオツマミには、かなり心動かされました。大小2種類の黒オリーブが調達できれば、チャレンジしたいです。




 ところで、本日の当ブログの記事、タイトルが「笑い牛」となっております。「La vache qui rit®」の日本での呼称は「Laughing Cow®(ラフィングカウ)」。なので、何故、勝手にそのようなあだ名をつけるのかと申しますと、私、NHK教育TV2005年度前半放映の「スペイン語会話」をよく見ていたのですよ。「笑い飯」が生徒役の。大岩先生の解説が丁寧で分かりやすかったものでしたが、妙に「笑い飯」のギャグばかりが耳に残ってしまいました。ああ、アーケー所で点五の餡ブレが食べたい。……と、最後の最後に来て、一体誰に分かってもらえるのかよく分からない話を持ち出して誠に恐縮ですが、正月にはお笑いが良く似合うのと、「笑い牛」と「笑い飯」、語呂が良く似ているということで、どうぞよしなに。



《最終更新日:6月1日》

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