« 2007年11月 | トップページ | 2008年2月 »

2007年12月31日 (月)

「ペルセポリス」映画見てきました

▼映画『ペルセポリス:PERSEPOLIS』公式サイト
persepolis_movie_jp2.jpg

 つい先日、当ブログ10月4日付け記事等で取り上げてきた、アニメ映画「ペルセポリス」を見てきました。前の記事でも書いたように、予告編の仏語版や英語版に違和感を感じていたし、いまどきの欧米の対イラン情勢を含めた周辺報道にも良い気がしなかったのですが、実際に見てみると、そういういった事とはお構いなしに、良い映画でした。どの予告編とも印象が違うものでしたし、逆に、確かに前評判が高いだけのことがあるなと思ったものでした。

 革命~その後の恐怖政治~イラクとの戦争~イスラム原理主義による様々な抑圧といったイランでの出来事と、主人公マルジが少女から大人になっていく過程での様々な出来事。国家や宗教を巡る種々の衝突と、ひとりの女性が成長していく上で出会う事柄とが絡み合って、時に衝撃を受けたり怒りを感じたり、マルジの強く生きていく姿に共感したり励まされたり、おばあちゃんの言葉に示唆を受けたりと、有意義なものを多く受け取りました。また、モノクロのアニメーションも、暖かみや重厚さ、時にユーモラスな雰囲気を程良く醸し出していて、見ていて心地よいものでした。

| | トラックバック (0)

2007年12月30日 (日)

「漫画」をフランス語で何というか?

▼“La historieta en el mundo: La Bande Dessinée en Francia y Bélgica”
por_que_bande_dessinee.jpg

 アルゼンチンのEducaRed ArgentinaというサイトのHistorietas(漫画)コーナーの中にある「El fascinante mundo de la historieta(漫画の魅惑的な世界)」というシリーズ連載。この中から、各国の「漫画」の呼び名とその語源を解説している漫画作品をご紹介する3回目(ちなみに第1回は→こちらで、第2回は→こちら)。今回は、フランス・ベルギーの「Bande Dessinée(バンド・デシネ)」について。「Bande Dessinée」は「描かれた(Dessinée)」「帯(Bande)」というのは当ブログでもおなじみではありますが、それに対応するスペイン語が「描かれた(Dibujada)」「帯(Tira)」で、この「tira(複数形はtiras)」という単語は、辞書によると「(新聞などの)続きこまマンガ」の意味もあるのだそうです。英語で言うところの「(コミック・)ストリップ」と同じですね。

 今回取り上げるリンク先の漫画のミソは、所々にバンド・デシネの有名作品のキャラクターが隠れているところ。とりあえず分かっているものを挙げていくと、1コマ目タイトルに巻き付いている尻尾が「Le marsupilami」で鉛筆立てに入っているのが「Astérix」「Les schtroumpfs」、2コマめの黒いベレー帽の男の子は「Benoit Brisefer」でBDを読んでいるのが「Boule et Bill」、4コマ目で新聞を読んでいるのが「Lucky Luke」、最後のコマで吹き出しの下に隠れているのが「Spirou et Fantasio」に「Tintin」。…分からないものもありますが、判明したら書き足します。では、例によって拙訳は以下の通りです(今回のはこれまでにも増して訳しづらくて自信なし…)。

--何故Bande Dessinéeなのか?--
(原案:B.D.、シナリオ:FABIO BLANCO、作画:ADRIAN MONTINI)
(1)「こんにちは、僕はダヴィーヌ。僕は今描き終えられようとしているけど、これがフランス語でバンド・デシネと呼ばれているもので、描かれた(←Dibujada)帯(←Tira)を意味しているんだ。フランスやベルギーでは、漫画のことをこんな風に呼ぶんだ。」(2)「しかしながら、バンド・デシネは“新聞漫画(←tiras)”として読まれるのではなく、44~64ページのアルバムの形で読まれる…図書館で読んだり保管するのにおあつらえむきなんだ。これらの漫画のいくつかは、前もって漫画雑誌にエピソードが掲載されるのが常だったんだ。」(3)「そのような漫画雑誌は皆―とりわけPilot、Tintin、A Suivre、Pif―、ユーモアとアドベンチャーの正真正銘の“宝庫”となったのだけど、残ったのはSpirouだけだった。」(4)「幸い出版社は、描き下ろしの漫画や、或いは“総合誌”や新聞に掲載された漫画を使って、アルバムを刊行し続けた。」「ハハハ、このObélix(オベリクス)はとても笑わせるね!」(5)「フランスやベルギーの漫画のキャラクターはいろんな形で世界中に知られているし、MANGAやアメリカンコミックと“全力で”張り合っている。」「既にご存知のようにね。“Bande Dessinée”或いは“B.D.”と読んで下さいね!」「もし親しみを込めるなら“BéDé”とね!」

<2008年4月12日、19日追記>
主人公のDavine(ダヴィーヌ)さん、パッと見性別が分かりにくかったのですが、実は女性で、モデルはベルギーのBD作家で、また『Spirou』の初代作者Rob Velの奥さんなのですね。(→仏語版wikipedia)この漫画、なにげに中身が濃いです。訳文はそのうち直します…。

| | トラックバック (0)

2007年12月27日 (木)

2007年:多様性と活力

▼ACBD - Grand Prix de la Critique de Bande Dessinée - Bilan 2007
acbd.jpg

 年の瀬のバンド・デシネの話題といえば、ACBD(l’Association des Critiques et Journalistes de Bande Dessinée、日本語に訳すと『バンド・デシネの評論家及びジャーナリスト協会』→今年初めに誕生した公式サイト)という団体が発行する詳細な業界レポート。つい先日、今年のが発表されました(→こちら、またPDFファイルは→こちら)。当ブログでは、過去にこちら(2004年)こちら(2005年)こちら(2006年)で取り上げたことがありました。今年も例によって、たどたどしい直訳交えてかいつまんでご紹介したいと思います。

================================
2007年:多様性と活力
ヨーロッパ・フランス語圏におけるバンド・デシネの1年

1- 製作:12年連続して上昇し続ける:2007年には4313作品(3312作品が厳密な意味での新作)の漫画本が発行され、4.4%の増加となった。
……フランス語圏で年々増え続ける漫画の出版点数。後ろの詳論によると、新作3312作品の内訳は、アジアのシリーズが1428、フランス語圏のアルバムが1338、アメリカンコミックが227、グラフィックノベルが319とのことでした(グラフィックノベルの定義が良く分からない…)。そして、新作以外の内訳は、再版本が712、美術書やイラスト集が204、エッセイが85だそうです。

2- 出版:市場には、活力の兆候となる者が増えている:2007年には254社の出版社が漫画を発行した。にもかかわらず、ほんの17のグループが発行物の74%を占めている。
……どうやら昔ながらの出版社や小さな出版社は大手グループに吸収されているみたいですね。その中で一番漫画を出版しているのが「Delcourt(デルクール)」というグループで、主な子会社が「Akata」や「Tonkam」という会社。以下、残りの大手グループ名を列挙すると以下の通り。「Média Participations」「MC Productions」「Flammarion」「Glénat」「Panini」「Hachette Livres」「Touron」「Bamboo」「Les Humanoïdes associés」「Taïfu」「Editis」「Martinière」「Gallimard」「Paquet」「Asuka」「Bayard」

3- 最適化:90のシリーズが巨大なスペースの恩恵に浴し、あらゆる書物のジャンルのベストセラーの中に位置し続ける。
……後ろの詳論には今年の発行部数の多かったバンド・デシネやMANGAのタイトルが挙げられているのですが、おなじみのものばかりで目新しさは無さそうな…。詳しいリストはPDFファイルの方に載っています。

4- 翻訳:1787作品の外国漫画(うちアジアから来た物が1371であり、253がアメリカ合衆国の物)が翻訳された:昨年と比べてわずかに減少している。
……アジアからの漫画の内訳は、日本1152、韓国130、中国と香港74、マレーシア・シンガポール・台湾・タイ・インド15、だそうです。その他の国では、イタリア63、スペイン24、イギリス13、ドイツ9、オランダ6、アルゼンチン5…とのこと。26ヶ国、全新作の53.95%がフランス語圏以外の国の漫画だそうで、何とも国際的というか懐が深いですね。また、日本のMANGAのファンサイトが列挙されていたので、こちらにも転記します(animeland.com, animint.com, mangagate.com, mangavore.net, manga-news.com, manga-sanctuary.com, mangaverse.net, the-ryoweb.com, ou encore webotaku.com)。

5- 翻案とメディア展開: バンド・デシネは新たに文学作品を翻案する(2007年には96冊のアルバム)、他の表現手段にますますインスピレーションを与えているというのに。
……多くの出版社は新規読者獲得のために新しいレーベルを立ち上げる一方で、古典文学や演劇の漫画化も増えているという話。また、いくつかのメディアミックス事例が挙げられていました。映画「Persépolis」は日本でも公開されて知られていることと思いますが、TVゲームの中にも日本に紹介されているものがあるみたいですね。「Astérix」や「Lucky Luke」、BD作家Benoît Sokal(ブノア・ソカル)が立ち上げたプロダクション「White Birds」等、日本のゲーム紹介サイトでその名前を見かけました。

6- 刊行の前に:キオスクや本屋には77種の専門雑誌が存在する、バンド・デシネはインターネット上に、単行本出版に先立つ部分的発表において新たな創造的な土壌を見出しているというのに。
……いくつかのBDのアルバムは、刊行の前に「prépublication」と言って、雑誌等に先行発表するものがあるそうです。その数、2007年では395タイトルで全新作の11.92%とのこと。日本のように、雑誌で連載して好評なら単行本化、というのとも異なるようですね。後ろの詳論にはいくつかの雑誌名が挙げられていているのですが、やはりMANGA人気の影響がここにも表れている模様です。ヨーロッパ人によるMANGA雑誌に「Shogun Mag」というのがあるのですが、更に「Shogun Shonen」「Shogun Seinen」「Shogun Life」といった雑誌も刊行しているのだそうですよ。一方で、近年はインターネットでBD関連のブログやサイトが増えているそうです。主なものが列挙されていたので、転記します。これらのサイトは絵を眺めているだけでも楽しいですし、お買い物の参考にもなると思いますよ。(bdgest.com、coinbd.com、actuabd.comc、bdzoom.com、bdoubliees.com、toutenbd.com、planetebd.com、sceneario.com、auracan.com、bdselection.com、bdtheque.com、atelierbd.com、graphivore.be 、bdtresor.net、labd.cndp.fr、krinein.com/bd、bandedessinee.info、 bdetente.com、clairdebulle.com、neuvieme-art.com、bdcentral.com、1001bd.com、bulledair.com、du9.org、bdouebe.net、notembulles.info、eurobd.com、blam.be、wartmag.com、bedeo.fr、expressbd.com、bdparadisio.com)

7- 訃報と社会的名声の公認:13人のフランス語圏の作家が2007年に亡くなり、20年以上前の128作品が再版されている。
……今年亡くなられた作家と、昔の作品の再版情報。最近になってBDを読み始めた者には、過去の名作の再版は有り難いものです。

8- 満足:いずれにせよ、1357人のバンド・デシネ作家が、生活していけるよう仕事し続けている。
……ここで言うバンド・デシネ作家の定義とは、少なくとも3冊のアルバムの在庫があり、契約中または定期的な仕事を持つ人だそうです。1357人のうち女性が137人、シナリオライターが232人。また、作家の権利保護のための団体「SNAC(Syndicat National des Auteurs et des Compositeurs)」というのがあるそうです。
================================

 ここ数年「フランスで日本のマンガが大人気」みたいな報道をあちこちで目にしますが、大抵の場合、そのソースとなっているのが、このACBDレポートです。なので、バンド・デシネに興味のある方や、日本のマンガのフランス語圏での展開が気になる方には、このレポートはとても有意義なものだと思います。私が上に書いたのは、ほんの部分的なもので、見る人が見たら、また別なところに見所を見出すと思いますので、是非原文に目を通されることをお勧めします。

(12月28日、加筆修正)

| | トラックバック (0)

« 2007年11月 | トップページ | 2008年2月 »