Corto Maltese:La ballade de la mer salée
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Corto Maltese:
La ballade de la mer salée(仏語版、casterman社、2000年刊)
Ballad of the salt sea(英語版、the harvill press社、1996年刊)
(コルト・マルテーズ:塩辛い海のバラード)
作者:Hugo Pratt(ユーゴ・プラット、1927-1995)
初出:「Sgt. Kirk」No.1(1967)-No.20(1969)(イタリアの雑誌、原題:Una ballata del mare salato)
(初出のデータは、こちらのページを参考にしました)

《あらすじ》
1913年11月から1915年1月にかけて、世界最大の海・太平洋で起こった出来事。
Raspoutine(ラスプーチン)を船長とする双胴船がオセアニアを航海中、難破船に遭遇する。生存者はいとこ同士の少年少女で、名前はCaïn(カイン)とPandora(パンドラ)と言った。Corto Maltese(コルト・マルテーズ)はRaspoutineと共に、オセアニア周辺海域(フィジー、サモア、トンガ…etc.)の原住民を船員に用いて船舶を襲って燃料や金品を奪う、いわゆる海賊だった。CaïnとPandoraは身代金目当ての人質として監視下に置かれる。
海賊の頭領は「Le Moine(モワーヌ、修道士)」と呼ばれる、頭巾で顔を隠した謎の西洋人。誰も知らない秘密の島「L'Escondida(エスコンディーダ、スペイン語で"隠れた(英語で言うところのhidden)"の意味)」を根城に、原住民を近代兵器で武装させて、王として君臨していた。
Moineは第一次大戦直前のドイツ軍と手を結び、イギリス船を襲撃して得た石炭や基地用の土地を提供することになった。ドイツ軍からはSlütter中尉(スリュッテール)が派遣される。
こうしてEscondida島を舞台に、様々な国家・民族の人々が集結し、対決やドラマが生まれる。しかし、やがてイギリス軍にその存在を知られることになり…

《感想など》
「Corto Maltese」はイタリアやフランスを始めとする、ヨーロッパで人気のシリーズ。これはその第1話です。日本やアメリカで流行らなかったのは、ひとえに絵が荒っぽいからではないかと思うのですが(格好良いなぁと思うときもあれば、もうすこし落ち着いて描いてくれないかと思うときもあり)、セリフをじっくり読んでみると、いやなかなか面白かったです。
得体の知れないMoineやイギリス人のCorto、ロシア人のRaspoutine、日本からの脱走兵Taki Jap(タキ・ジャップ)等、祖国を捨てた男達の集うEscondida島は一種異様な世界。作者のHugo Prattはコンラッドやスチーブンソンの小説に影響を受けているそうなんですが、Escondida島で暮らす原住民達は小説「闇の奥」とは違って、参謀のCranio(クラニオ)や世話係のSbrindolin(スブリンドラン)を筆頭に明朗快活でしたたかさを持ち、西洋人から学んだ知識を吸収して密かに独立の時期を伺っています。そんな中、戦時下の大国の思惑に翻弄されるドイツ人将校Slütterや、この異様な世界の人々との交流を経て成長していくCaïnやPandora、これらのドラマを包み込む海と神秘的な交流を持つマオリ族の少年Tarao(タラオ)が語る物語等、この1冊には多くの魅力が込められています。 
最初、パラッと全体を一瞥してみたところ「何か血の気の多い話だな」と思ったのですが、その大きな要因のひとつに、Corto Malteseが計4回、殺されかかっているというのが挙げられます。Corto Malteseという男は、やけに殺意を沸かされるキャラクターと言えると思います。でも、至近距離から弾丸を食らっても崖から突き落とされてもケガしただけでピンピンしているとは、非常にタフです。しかも、そういう相手と友情を交わす場面もあり、その懐の深さや楽天的なところは常軌を逸しているようにも思います。Cortoに限らず、描かれるキャラクターや出来事及び絵柄には、日本のマンガを読み慣れた身には常軌を逸した所が多々見受けられて面白く感じました。しかし、20世紀初頭を舞台として、国家や民族や人種やイデオロギーのぶつかり合いの混沌とした世界の中で様々な葛藤を経て交わされるセリフの数々には、心に染みるものがありました。エキゾチックな世界の中、漫画の娯楽的な要素と、シリアスかつシビアな題材とが混ざり合って、この作者独特の世界を構築しています。また、日本のマンガ用語で言うところの“キャラが立っている”ところにも惹き付けられました。
私はフランス語版(白黒版)を何年か前にAmazon.frで買ったのですが、A4サイズ163ページというボリュームの上にフランス語がびっしりと書かれているコマもあって、読みこなすのに難儀していた所、ネット古書店Abebooksで英語版(状態が悪かったので安く買えた掘り出し物)をゲットしたので、その助けを借りて読み終えました。英語版は長らく絶版になっていましたが、この度、何と、アメリカはHeavyMetal社より翻訳し直して刊行されるのだそうです(→詳細はこちらや、こちらなど)。判型が小さくなってしまうというのが残念なんですが、興味のある方はこの機会に是非ご一読を。まだAmazon.comにもAmazon.co.jpにも上がっていないんですが、入荷して欲しいものです。
「Corto Maltese」は約20年間続いた長期シリーズなので多くのアルバムが刊行されていますが、最初にどれを読むかといえば、やっぱり、この第1話がおすすめです。シリーズ最後の方は絵が更に荒っぽくなってしまっているので、ページをにらめっこしながら辞書を引いている身には辛いものがあります。でも、どんな事が語られているかが非常に気になるので、セリフとかスラスラ読めるようになりたいものです。
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