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2006年1月30日 (月)

SPIROU ET FANTASIO L'INTÉGRALE / 3

 前回のエントリの最後で触れた、「SPIROU ET FANTASIO L'INTÉGRALE 」第3巻の簡単なご紹介です。

「SPIROU ET FANTASIO L'INTÉGRALE / 3」表紙

タイトル:「SPIROU ET FANTASIO L'INTÉGRALE / 3」
作:André Franquin(1924-1997)
出版社:ÉDITIONS NIFFLE (2001年刊)

 「Spirou et Fantasio」シリーズのアルバム(単行本)は、ハードカバーA4サイズでフルカラーのものが現在第48巻(及び番外編が4冊)まで刊行されているのですが、この「L'INTÉGRALE」はひと回り小ぶりのサイズ(縦24cm×横19.5cm)でアルバム3冊分のストーリーが白黒印刷で収録されています。主線だけで色が付いていないのでは画面が白っぽくてスカスカするかと思いきや、サイズが小さいのと作者の描き込みが細かいおかげで違和感は感じませんでした。各ストーリーの冒頭に作者のコメントを交えた解説が載っているのが参考になります。各収録作のあらすじと感想は以下の通り。


●Les Voleurs du Marsupilami(マルスピラミ泥棒)
 SpirouとFantasioがPalombie(パロンビア)の原生林から連れてきた、未知の動物Marsupilami(マルスピラミ)。今は動物園の檻に入れられたMarsupilamiが何者かに盗まれた。SpirouとFantasioは犯人を追って、Zabaglione(ザバグリオーヌ)が座長を務めるサーカスに潜入する。―「Spirou」誌1952年4月3日号~1952年11月13日号掲載。
Les Voleurs du Marsupilami

 …Spirou少年は制服姿のせいか礼儀正しく見えて、少々物足りなく感じられます。その分Fantasioの方が喜怒哀楽の差が激しくて大人げなく、行動にメリハリがあって面白いです。Marsupilami救出のために潜入したサーカスではフンドシ一丁の姿で芸をこなしていました(本当はフンドシとは言わないのでしょうけど…)。Marsupilamiはといえば、当初ネットでその姿を見ていても、この手足と尻尾のヒョロ長い豹のような動物のどこがそんなに大人気なのかピンとこなかったのですが、漫画の中の躍動的な姿を見ていると、何だか魅力的に感じられて愛着が沸いてきました。この作者は動きを描くのがとても上手いと思います。


●La Corne de rhinocéros(サイの角)
 Fantasioは契約先の「Moustique(ムスティック)」紙からボツを食らい、他のジャーナリストと契約すると言われた。そこで起死回生を狙って、Spirouを連れて深夜のデパートの倉庫に忍び込んで空き巣の振りをして記事にしようと企んだ(それってヤラセ取材じゃ…)。その打ち合わせ中に、ラジオから自動車メーカー「Turbot(トュルボット)」の工場爆発事故のニュースが流れる。その晩、デパートの倉庫にて空き巣取材の実行中、大怪我をしたTurbot社員のRoulebille(ルルビル)、彼を追って取材中の女性ジャーナリストのSeccotine(スコティーヌ)、Turbot社を襲ったギャング2人組に遭遇する。ギャングから逃げおおせたSpirouとFantasioは、工場襲撃の難を逃れて逃亡中のTurbot社員Martin(マルタン)と彼の元にある新車「Turbotraction(トュルボトラクスィヨン)」の設計図を救出するために北アフリカへと向かう。―「Spirou」誌1952年12月4日号~1953年7月23日号掲載。原題「Spirou et la Turbotraction(スピルーとトュルボトラクスィヨン)」
La Corne de rhinocéros

 …冒頭の解説中に「censure(検閲)」という言葉が目に入り、作中にいかにもな黒人の部族が出てくるから、てっきりベルギーにも黒人差別問題があるのかと思いきや、ギャングがピストルを手にしているのがいけなかったのだとか。当時のフランスに漫画の表現規制があって、ベルギーの漫画もそれに従わないと市場から締め出されるおそれがあったのだそうです。この作品で初登場する女性キャラクターのSeccotineは行動力があって気が強いジャーナリスト。「ツン」はあっても「デレ」は無し(念のために書き添えておきますと、昨今の日本のギャルゲー等の萌えキャラクターの概念に『ツンデレ』というのがあるのです。詳しくはこちらをご参照下さい)。また、このシリーズには色々と画期的な乗り物が出てきます。椅子にプロペラとエンジンのついた「Fantacoptères(ファンタコプテール)」とか、流線型のデザインがモダンな自動車「Turbotraction」等々。


●Le Dictateur et le Champignon(独裁者とキノコ)
 SpirouとFantasioは、Le Comte de Champignac(シャンピニャック伯爵)の敷地内の庭園にかくまわれているMarsupilamiに会いに行く。Champignac伯爵は敷地に生えるキノコを使って「Métomol(メトモル)」という、振り掛けると金属が柔らかくなる薬を発明して2人に披露するのだが、Marsupilamiがいたずらして村中の金物を柔らかくしてパニックを起こしてしまう。そこで2人はMarsupilamiを動物園に戻そうとするが、動物園は財政難で閉鎖してしまったので、故郷の南米Parombie(パロンビア)に帰そうと考えた。Parombieの首都Chiquito(チキート)に到着すると、そこは、FantasioのいとこのZantafio(ザンタフィオ)がGéneral Zantas(ザンタス将軍)として統治する、軍事独裁政権下にあった。Géneral Zantasは隣国への侵攻を企んでおり、SpirouとFantasioはそれを阻止するために活躍する。―「Spirou」誌1953年8月20日号~1954年5月6日号掲載。
Le Dictateur et le Champignon

 …Marsupilamiの故郷Parombieのネーミングは、コロンビアがネタ元なのでしょうか。でも住民の服装はメキシコ風だし、ヨーロッパから来た冒険家に国が支配されるというあたりに当時の世界観がうかがえて、ちょっと抵抗感がありました。それにしても子供向けコメディー漫画にしてはハードな展開。前回のピストルはNGでも、今回のバズーカ砲やマシンガンはOKだったのでしょうか。でもその辺はうまく工夫して、お子様でも安心して読めるように出来ているので大丈夫。また、人柄は良いのに、とんでもない発明でいつも騒ぎを起こしてしまうChampignac伯爵が良い味を出しています。

 3作とも、絵はうまいしギャグもたくさん仕掛けられているし、とても楽しく読めました。この作者及び作品は日本ではあまり知られていないのですが、もったいなく感じられました。

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