アメリカ(及び英語圏)-02

2013年1月14日 (月)

続・「週刊少年ジャンプ」とアメリカン・コミック

 2007年1月4日付け記事から6年後、ようやく、週刊少年ジャンプの創刊初期に掲載されたアメリカン・コミックについてご報告する時が来ました。実は昨年の秋~冬頃、国会図書館へ行ってきたのです。蔵書検索をしたところ、創刊号~3号めまでの合本は決められた場所で閲覧することとなっており、扱いが面倒くさそうだったから、4号~7号の合本を閲覧し、複写をお願いしました。という訳で、以下、簡単なご紹介です。


「宇宙ロボット戦争」ダン・バリー作(1968年第1巻4号、9月12日号)
jump_1968_4_flashgordon.jpg
 タイトル横に「フラッシュ・ゴードン」と書いてあります。シリーズ作品の一つなのですね。1頁めに作者の写真と囲み記事で紹介が載っていて「☆本誌第1号に登場した、アメリカの人気漫画家/☆絵の才能は、世界的に認められていて、各国大使館にかれの絵がかざられているほど高く評価されております。」との事。
 あらすじ:太陽系の奇妙な天体を探知した人工衛星が立て続けに行方不明になるため、フラッシュ・ゴードンとザルコフが調査に向かうというもの。宇宙空間で目玉の形をした謎のロボットに遭遇し、その際の戦闘による不時着から、ゼムとアスの惑星間戦争に巻き込まれ、平和交渉に持ち込むのだが、結局何の役にも立ちませんでしたというオチ。これって、アメリカが介入した戦争のどれかからネタを引いているのでしょうか。


「空飛ぶ円盤を追跡せよ」リー・フォーク(物語)、フレッド・フレデリック(絵)(1968年第1巻第5号、10月3日号)
jump_1968_5_mandrake.jpg
 タイトルの下に「魔術(マジックのルビあり)探偵マンドレーク」とのロゴあり。作者紹介は「リー・フォーク(物語) 第二次大戦中、アメリカの外報局長としてかつやく。この経験をいかして、探偵ものを、かくようになった。」「フレッド・フレデリック(絵) このほかに「マイティ・マウス」も発表している。美術学校出身の本格派。」との事。
 あらすじ:アメリカで空飛ぶ円盤を見たという人が続出するとの新聞記事を見て、マンドレークは国際諜報部へ向かい、同じ日、同じ場所で銀行強盗が起こっていることから、円盤の正体を突き止めようとする。


「洗脳記をぶっ壊せ」アル・ウィリアム作(1968年1第1巻第7号、10月31日号)
jump_1968_7_corrigan.jpg
 タイトルの上に「秘密諜報部員・コリガン」のロゴあり。作者紹介は「1931年、ニューヨークで生まれる。コミック「フラッシュ・ゴードン(本誌でもおなじみ)をみて、漫画家を志した。/1966年、全米漫画協会賞を受賞ご、『秘密諜報員コリガン』で人気作家となる。37歳」とのこと。
 あらすじ:アメリカの国際的な科学研究所が連続して原因不明の爆破事件を起こすので、政府は事件の調査をコリガンに依頼した。コリガンは妻と共に旅行者のふりをして、過去に犯罪をおかした科学者が宿泊したホテルに潜入し、別な博士と、その博士の応対をしている一味を追って、地下室にある機会を発見し、コリガンに気付いた一味を格闘する。


 掲載のレイアウトは、日本と同様のめくり方、コマの順番で、アメリカのものを切り貼りしたのでしょうか。読んでて全く違和感がありませんでした。他の掲載作品と比べると、もちろん絵がバタくさくて芸が細かいのですが、全体としては何か馴染んでるように感じました。今はそれほどでもありませんが、昔は民放のTVでも外国のドラマが放映されていたので(私の子供の頃なら「奥様は魔女」とか「サンダーバード」「コンバット」など)、それに近い感じなのかなぁと思ったものです。これらのアメリカン・コミックが掲載されていた1968年9月~10月頃にどんな海外番組が放映されていたかは、後日調べてみたいと思います。あと、この3作品の原題やアメリカ版画像も調べられれば、ここに追記します。
jump_1968_4_flashgordon_p206_207.jpg
(↑「宇宙ロボット戦争」より)


 そして、特筆すべき事が。ジャンプの巻末は作者のひとことメッセージが並ぶのですが、これら外国漫画の作者も例外ではありません。しかし、本当にメッセージを貰ってきたのでしょうか。適当にでっちあげたりはしてませんでしょうか…。私のこのような失礼な憶測を払拭できるような、当時の編集者による談話でもあると良いのですが…。
jump_1968_4_flashgordon_dan.jpg jump_1968_5_mandrake_fred.jpg jump_1968_7_corrigan_william.jpg
(↑この似顔絵、扉に掲載された写真をもとに描いているように見える。でも真ん中のは、脚本家と作画家を取り違えているのでは…?)

|

2008年12月 9日 (火)

ネットで見かけたMoebiusの話題いくつか

 日本で有名なバンド・デシネ作家といえば、やっぱりMoebius(メビウス、またの名をJean Giraudジャン・ジロー)。というわけで、ネットで見かけたMoebiusに関する動画や漫画、話題をお伝えいたします。

▼Incal & Arzach trailers
moebius_incal_and_arzach_trailer.jpg
 youtubeにupされている、Moebius作品のパイロットアニメ。製作のいきさつ等はどこにも書いてありませんでした。『Incal』の方は、投稿者によると、Alejandro Jodorowsky(アレハンドロ・ホドロフスキー、原作のシナリオ執筆者)とMoebiusが関わっているそうなのですが、完成されなかったのがつくづく惜しまれます。『Arzach』の方は、投稿者は特に何も言っていないのですが、果たして完成版はあるのでしょうか…?日本でDVDが出ている『アルザック・ラプソディ』とは別物だと思うのですが…。

▼The story of an idea
moebius_the_story_of_an_idea.jpg
 スイスの赤十字社のサイトより。Moebiusの10ページの短編作品がpdfファイルでネットに上がっている!内容は、赤十字社及び赤新月社の誕生から現在に至るまでの活動について描かれたもの。短編アニメにもなっています(→こちら)。ネットに上がっているのは英語版ですが、漫画の冊子は英語・フランス語・スペイン語・アラビア語・中国語版が、アニメDVDは英語・フランス語・スペイン語・アラビア語がお取り寄せできるそうです(でも、注文画面を見ると、冊子にはアラビア語版は無い模様。それにしても、冊子は無料で注文できちゃうの…?)。ここは是非、日本語版も欲しいところなのですが…。

▼Salón Barcelona: Moebius
moebius_salon_barcelona.jpg
 スペインはバルセロナでの漫画イベントにて、Moebiusインタビュー動画。スペイン語で会話しています。サイン会の模様も紹介されていて、イラストを描いているところも間近で見えます。こんな風に日本に上陸する日は、果たして来るのでしょうか……?


 また、この9月に創刊された、日本初のヨーロッパ漫画誌「euromanga(ユーロマンガ)」の公式サイト(→こちら)のニュース欄(→こちら)には、Moebiusの最新情報が載っていますよ(→こちら)!他にも、バンド・デシネ関連や掲載作の関連情報が刻々とupされている模様なので、これはマメにチェックしなくては!

| | トラックバック (0)

2008年11月 7日 (金)

イエローキッドはアイルランド系の子供

▼The Yellow Kid on the Paper Stage
yellowkid.jpg

 アメリカ新聞漫画の祖であり「イエロージャーナリズム」の語源ともなった『Hogan's Alley(ホーガン路地)』。その中に出てくる「イエローキッド」と呼ばれる黄色いパジャマを着た坊主頭の男の子は、その見た目から中国系とかアジア系とか言われがちですが、正しくはアイルランド系です。9.11をめぐって描かれたアート・スピーゲルマンの漫画『消えたタワーの影のなかで』(小野耕世訳、岩波書店、2005年刊)の中に「日曜新聞のコミックス付録」という、昔の新聞漫画について解説しているページがあるのですが、その中でも言及されていました。

 冒頭に挙げたサイトには、イエローキッドに関して、作者や作品やその時代背景、とりわけ経済格差や差別問題について、豊富な画像を交えて解説されていました。ひとつ驚いたのは、このページのいちばん左下のイラスト。Hogan's Alleyには、日本人移民の子供もいたのでしょうか。

《その他参考リンク》
●The Irish Comics Wiki / Irish Comic Strip Characters
●Classic Comic Characters #30: The Yellow Kid Statue
 この二つのリンク先、イエローキッドの名前が、上は「Mickey Duggan」、下は「Mickey Dougin」と書いてあって困ってしまったのですが、冒頭に挙げたサイトの中に載っていた新聞広告のイラストに書いてある「MICKEY DUGAN」というのが正しい綴りなのでしょうね。


【12月8日追記・イエローキッドの仲間(?)2種をご紹介】

(その1)
▼『Terry et les pirates, tome 2 : 1937』の表紙より
terry_pirates_connie.jpg
→amazon.frの紹介ページはこちら
 『Terry and the Pirates(テリーと海賊達)』は、1930年代~40年代のアメリカの新聞連載漫画。作者は、Milton Caniff(ミルトン・カニフ)。この写真は、フランス語版単行本の表紙の一部分です。買ったまま仕舞い込んでいたのを発掘しました。写っているのは、イエローキッドそっくりのキャラクター。名前はGeorge Webster Confucius、通称Connieという中国人で、いかにもなステロタイプのアジア系。ネットでこの漫画のあらすじを調べてみたところ、どうも日本人にはしょっぱい要素があるようで……。

(その2)
▼フランスのBD情報サイトBDZOOM.comのtopページより
bdzoom_kid.jpg
 こちらは、おそらくイエローキッドを可愛らしくしたとおぼしきマスコットキャラクター。連載ものであり、笑いや風刺があり、キャラクターグッズが好評だったイエローキッドは、現代に連なる漫画文化のシンボルということなのかも知れません。

| | トラックバック (0)

2008年10月31日 (金)

フランス語でペンギンを何と言うか(後編)?

 前回のエントリの続きです。一連の調査の過程で見つけた、ペンギンさんに関する興味深い話題を二つご紹介します。いつの時代にも、どこの国でも、ペンギンさん達は魅力的に描かれているのが分かります。


▼Pip, Squeak and Wilfred(ピップ、スクィーク、そしてウイルフレッド)
《参考リンク》
Pip Squeak & Wilfred's Pages
PIP, SQUEAK AND WILFRED

 『ペンギンは歴史にもクチバシをはさむ』(上田一生・著、岩波書店2006年刊)という本を読んでいたら、188頁に興味深い記述を見つけました。1923年(大正12年)に「東京朝日新聞」で連載が始まった『正チャンの冒険』シリーズ(織田小星と東風人との合作)は、英国の新聞連載漫画 『Pip, Squeak and Wilfred』に着想を得たものなのだそうです。確かに、この件についての参考文献である『はじめて学ぶ日本の絵本史Ⅰ 絵入本から画帖・絵ばなしまで(鳥越信・編、ミネルヴァ書房2001年刊)』には一章を設けて『正チャンの冒険』について詳しく書かれているのですが、298頁にその辺りの記述がありました。『正チャン~』といえば、数年前に復刻本が出たときに、そのタイトルといい画風といい『タンタンの冒険』に似てるかも…?でも『正チャン~』の方が古いし…?などと言われたものですが、モデルとなった外国漫画は別なところにあったのですね。

  『Pip, Squeak and Wilfred』は、雑種犬のPip、ペンギンのSqueak、ウサギのWilfredが登場する、英国の新聞「Daily Mirror」で1919年5月11日に連載が開始された漫画。これらのキャラクターを考案したのは、子供向けコーナーの編集者Bertram J. Lamb(通称Uncle Dick)。当初はPipとSqueakのみ、翌年にWilfredが登場。Pipは父親っぽい役割で、Squeakはハンドバッグを手にした母親っぽく、Wilfredは'gug'や'nuc'といった赤ちゃん言葉しか喋れない赤ん坊なのだそうです。1938年にB.Lambが亡くなった後は、「Daily Mirror」紙で彼のアシスタントをしていたJohn Freemanがストーリーを提供。一方、作画は、1919年~1953年(第2次世界大戦により1940年6月に中断、1947年に再開)にはAustin Bowen Payneが担当し(時折、H.F.Pothecaryが手伝う)、1953年にPayneが引退した後はHugh McClellandが1955年の最終回まで引き継ぎました。様々なキャラクターグッズが作られ、年鑑が発行され、「Wilfredian League of Gugnuncs」という結社が組織されてチャリティー基金を創設する等、大人気を博した作品だったようですね。また、サイレント映画のシリーズがLancelot Speed監督によって作られたそうで、漫画と併せて、こちらも見てみたいです。


▼Histoire naturelle, generale et particuliere(一般と個別の博物誌)
《参考リンク》
(その1)
Buffon et l'histoire naturelle : l'édition en ligneより、
Tome Vingt-quatrième. 1783.の中の、
Les Pingouins et les Manchots ou les Oiseaux sans ailes.
(その2)
貴重資料画像--京都大学電子図書館より、
一般と個別の博物誌 / ビュフォンの中の、
京都大学医学図書館所蔵資料 『Histoire naturelle, generale et particuliere, oiseaux (T.1-18)』 [9, 228/344]

 フランスの博物学者Buffon(ビュフォン)による大著。1749年からビュフォン没後の1804年まで全44巻が刊行されたそうです。ペンギンさんのフランス語訳である「manchot」の語源を探すと、前エントリで挙げたBrisson(ブリッソン)の『L'ornithologie(鳥類学)』ではなく、こちらの本が出典に挙げられていることがありました。日本の書籍では『世界代博物図鑑(4)[鳥類](荒俣宏・著、平凡社)』の32頁に出て来ます。『一般と個別の博物誌』の原文はネット上にテキストデータが載っているので、「Les Pingouins et les Manchots ou les Oiseaux sans ailes(Pingouin達とManchot達、或いは翼のない鳥達)」という章をプリントアウトしてザッと目を通してみたのですが、どうにも『世界代博物図鑑~』で言っている「そして、北のペンギン<オオウミガラス>を従来どおりのペンギンとし、南極産のものをマンショmanchot(のろまの意)と名づけた.」に相当する文章を見つけられませんでしたし、「manchot」に果たして「のろまの意」が有るのか疑問に思いました(不器用の意は有るようですが)。でも、私には『L'ornithologie』の原文を入手することも、『一般と個別の~』の原文ををくまなく読むことも不可能でしたので、このあたりは、うやむやのままに記述するにとどめます。しかし、これだけは言えるのですが、京都大学のサイトにupされている『一般と個別の~』の挿絵は素晴らしく、また、家にいながら18世紀の書物にアクセスできるというのは、何と有り難いことでしょうか。

| | トラックバック (0)